天使
天使 / 感想・レビュー
カフカ
これは……至高……🙏🏻天使、吸血鬼、美少年、同性愛……。禁忌的なモチーフが、美しい文章によって綴られた耽美な物語。蠱惑的な天使や吸血鬼に魅了される登場人物と共に、私自身も恍惚となる。特に美しく妖しげな天使がね……悪いやつなんだけれど可愛くもあり、堪らない。透明な美しい声音で「ルンルンルン、ルルル、ルルル、ルルールルー……」なんて言って誘うんですよ……。すっかり須永朝彦の虜になってしまった故、以前から気になっていた『山尾悠子編 須永朝彦傑作選』も読まねば。
2023/05/01
なつ
種族、性別を超えて人を惑わせる天使、吸血鬼が織り成すミステリアスな幻想譚。モチーフや表現の仕方がもう刺さる刺さる。トランシルバニアといった地名や爵位の関係にウズウズしました。短編集だけれど味わいたくて時間をかけて読みました。漢字の使い方の新たな発見もできて勉強になります。やはりというか、女性は扱いが悪い(苦笑)
2021/06/17
yn1951jp
解説で千野帽子が「厄介な氷菓子」に喩える美少年譚集。作者の美意識だけで構築される散文詩的な短編は、冷たい耽美であり、味覚と嗅覚は遅れてやってくる為、作品の味わいには時差が生じるのだ。須永が20代に、ドイツ、オーストリアからバルカン、トランシルバニア、スペインにまたがる旧ハプスグルグ家の領有した幻影の国に憧れて創作した伝奇浪漫譚であり、1970年代に多様な雑誌に掲載されたアングラ時代の甘美な氷菓子である。〈つかのまの闇の現(うつつ)もまだ知らぬ夢より夢に迷ひぬるかな〉続拾遺913式子内親王。
2016/02/06
skellig@topsy-turvy
須永さん自ら選んだ濃厚な耽美短篇・掌編集。美醜と性差がそのまま神(ここでは作者)の寵愛を受けるか否かを分ける明瞭で残酷な世界。美貌の男は残酷で誘惑的で静かな知性を宿し、女にはまるで性的興味はなく、美少年を求める。ほぼ全てこのパターンなのだが、飽きない。吸血鬼に天使といった異形のものは抗えない微笑を浮かべて牙を立てる。硬質な文章なのに、たまにさらっとハズしてくるところが憎い。読んでいる最中、ずっと芳醇な葡萄酒の香りがしていた、ような。暗くて妖しい雰囲気の場所で読むときっとなお良し。
2014/01/21
柊渚
悶絶。一息に読もうとしたら駄目…というかできない。強い眩暈と酩酊感に襲われます。 美少年、吸血鬼、天使、一角獣。妖しく蠱惑的な文章によって、美と美が睦み合う、甘く芳しい世界に絡め取られていく。幻想的で麗しい物語の数々、まるで大人のお伽噺のようでした。「氷菓子の冷たさのような美しさ」と千野さんが解説されていたけれど、まさにその通りだなと。徹底的に美を高めた文章は読者を置いてけぼりにしてしまうこともあるのかもしれないけれど、一方で惹き付けられてやまなくしているのでは…。私はすごく、すごく好きだった。
2021/08/25
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