乱視読者のSF講義
乱視読者のSF講義 / 感想・レビュー
Tonex
SF小説に関するエッセイ集だが、ナボコフ好きな著者のことゆえ、SFを語っていても、なぜかナボコフが顔を出す。▼ 273頁。《ナボコフを読んでいると、世界がナボコフ色に染められてしまうような気がする。ナボコフを読むのは、度の強い眼鏡を与えられたようなもので、いったんその眼鏡をかけてしまうと、どんな小説を読んでいても、もうその強度でしか小説世界を見ることができない。》
2016/02/26
蛸
この本を読んで(とても大袈裟な言い方になるけど)「今まで自分は小説を読んでいなかった」と思った。それくらい著者の「読み」は深くて精緻極まりない。SF史や作者のキャリアを参照しつつも、あくまでもテクストを丁寧に読み込むこと。時に語学的なアプローチをとりつつ些細なモチーフを見逃さない「読み」が作品の持っている豊かさを存分に引き出す。著者は所謂SFオタクではない。そう言った人がジャンル小説を読むときのフラットな視点が文章全体をとても風通しの良いものにしている。心底こういう風に小説が読めるようになりたいと思った。
2020/07/22
garth
「大切なことは、ここが近道だと教えてくれるような、他人の意見をあまり鵜呑みにしないことだ。本を読む意味は、どこまでも個人的なものである。発見の驚きと喜びは、たとえそれがどんなにささやかなものであっても、読者個人にとって大きな意味を持つものであればそれでいいのだ」これを読むと、かならずやジーン・ウルフを読み直したくなるはずだ。だからまだ買ってない人は『ケルベロス第五の首』と『デス博士の島その他の物語』買ってね!
2011/11/17
vaudou
SFという枠自体を疑ってかかる読み方。 SFがアメリカのパルプ雑誌から誕生したのではなく、ウェルズの科学ロマンスの延長線上に続いていたら?ラブクラフトが「宇宙の色」以降、「SF」というジャンル小説を書くことに意識的に取り組んでいたら?発表年代順に時代背景と作家像を考察していく傍ら、そういった大所高所から枝葉を空想する一ファンとしての目線も入ってきて面白い。トマス・M・ディッシュのカオスの源など、長年の疑問にも納得できる点多し。
2015/12/28
スターライト
いやはや、ウルフはとんでもない作家だなあと改めて思うとともに、若島先生の深読みにはひたすら脱帽。ウルフの迷宮に迷い込んだままの読者としては、作者の用意した正解にたどりつけなくてもいい、との言葉に慰めを覚えるが、再読、三読してわかるさまざまな仕掛けを堪能できるにこしたことはない、とも思う。まあ、今さら自らの知力のなさをなげいても仕方のないことではあるが、それは再読の楽しみを残しているのだ、と思うことにしよう。
2011/11/26
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