定本 夢野久作全集 第3巻
定本 夢野久作全集 第3巻 / 感想・レビュー
HANA
二大長編「暗黒公使」「氷の涯」を含む1933~34年に発表された作品が収録されている。長編のうち「氷の涯」の完成度は唸らされるばかり。ただ両者ともに夢野久作のコスモポリタン的な部分がクローズアップされているようにも感じた。特に「氷の涯」で描かれる哈爾濱の異国情緒や放浪時の描写と言ったら。他にも「白菊」や「木霊」といった一種異様な寂寥感を持った作品や、「山羊髯編集長」「無系統虎列剌」といったユーモラスな作品まで収録されているのは兎に角幅広い。相変わらず多面体のような久作世界を味わい尽くせる造りとなっていた。
2018/12/25
ぐうぐう
巻頭に収録されている「暗黒公使」は、『新作探偵小説全集』のために書かれた長編だが、本格ミステリという形式上の縛りがあることで、逆に夢野久作らしさが発揮されている。とはいえ、かなり風変わりな本格物ではある。夢野久作が書くのだから、普通であるわけがない。この「暗黒公使」もそうだし、他の短編もそうだが、読んでいると、久作が溢れ出すイマジネーションを持て余している印象を受ける。もっと書きたい、なのに、枚数が足りない。ジャンルというスタイルが、久作のイマジネーションを支えきれなくなっている。(つづく)
2018/05/08
∃.狂茶党
『暗黒公使』何度も物語の道筋が書き換えられていく。 視点が固定されてるようで、手紙やらなんやらで、複数の視点が折り重なって、リアルタイムと、過去の出来事も混在化していく。 語りの手法は意識的なのか、視野が狭められた状態で、連れ回されるような読書。 右翼的な政治主張にちょっと引く部分はあるが、読者を引っ張っていく力も強い。 下巻は段落わけが増えている。 日本すごいって考えが露骨な反面、危機意識みたいなものも読み取れる。 不安でなければ、虚勢を張る必要もないですよね。
2024/03/05
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