新編・日本幻想文学集成 第9巻
新編・日本幻想文学集成 第9巻 / 感想・レビュー
ぐうぐう
「鷗外の系譜」と題された『新編・日本幻想文学集成』最終巻は、中島敦、神西清、石川淳、芥川龍之介、そして森鷗外の五人の作家が収録されている。中島敦は何をおいても「山月記」が知られているが、冒頭に配置された「狐憑」からして、面白さが炸裂だ。中でも「悟浄出世」の面白さは抜きん出ている。教えを乞うために旅に出た悟浄が、多くの賢者に出会うものの、読者は結局のところ、首を傾げ続ける悟浄にこそ教わるのだ。教科書に載せるなら、「山月記」よりも「悟浄出世」のほうが生徒にとっては学ぶことが多い。(つづく)
2018/04/21
咲
中島敦「文字禍」文字の無かつた昔、歓びも智慧もみんな直接に人間の中にはひつて来た。今は、文字の薄被をかぶつた歓びの影と智慧の影としか、我々は知らない。芥川龍之介「葬儀記」離れで電話をかけて、皺くちやになつたフロツクの袖を気にしながら、玄関へ来ると、誰もゐない。涙の乾いた後には、何だか張合ない疲労ばかりが残つた。その後は、唯、頭がぼんやりして、眠いと云ふ事より外に、何も考へられなかつた。解説も好き。芥川龍之介の随筆がもつ幻想を教えてくれる橋本治。淡々とした中にかおる機微。
2021/08/29
ぱぴぷぺぽ
*** (中島敦の文禍)を読みたくて 図書館本を探したらこの本が見つかった。厚くて重くて中身はびっしり。 古典といわれる作家がズラリ。久しぶりに出会った作品を拾い読みした。時代の経過を感じ、難読でした。
2024/11/07
:*:♪・゜’☆…((φ(‘ー’*)
山月記の虎独白が胸に迫り、蜘蛛の糸の極楽浄土がとてもけだるく「ニヒル」に感じたのは新鮮だった。中島敦「悟浄出世」「悟浄歎異」の主人公である沙悟浄がつぶやく心の声も新鮮だった。無口な人ほど心の中では饒舌なのか。三蔵法師に出会うまでのいきさつを西遊記で読んでみることにした。芥川龍之介は「文語体ならいくらでもすらすら書ける作家」らしい。「『近代の口語文』を作らねばならなかった」「まだ存在しない文体を創造しながら作品を仕上げていくのだから、その執筆が遅々として捗らないのは当然のこととも言えよう」
2018/10/17
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