後藤明生コレクション1 前期I
後藤明生コレクション1 前期I / 感想・レビュー
かわうそ
やっぱり後藤明生はめちゃくちゃ面白い。飄々と人を煙に巻くような文体で本筋からの脱線を繰り返しているかと思いきやいつの間にか大きく回り道をして元の話に戻っているみたいな構成がほんとに好き。このコレクションはあまり急がずゆっくり楽しもうと思っていたのですが、はやくも次が読みたくなってきた…
2018/03/24
踊る猫
一体なんなんだろう。タイトルから予想していたようなストーリー展開が読めない。予想もつかない展開、デタラメでそれでいて綺麗に繋がっているストーリー、軽妙な語り口……どうでも良い微細な部分をこれでもかというほど丹念に記述し、綿密に記録して行くその術はカフカやベケットのようでもあるし、そうでもなさそうだ。落語がベースとなっているという点では町田康氏にも通じそうな気もするが気のせいかもしれない。兎に角ワケが分からない。読んでいて予想もつかないスジの展開で脳が疲れてしまうのだけれど、不思議と読み応えあり。シュール!
2017/04/05
amanon
何とも言えず感想が述べにくい作品集というべきか。巻末の解説で、著者の作風の一端が理解できた気はしたが、それでも更なる深読みが必要であることを痛感。冒頭に収められた「関係」では、数十頁程の短編であるのにも関わらず、多数の登場人物が出てくるのに面食らった。そして、いくつかの連作と言っていい私小説風作品群で、度々主人公の疾患が描かれているのに、創作の世界でありがらも、「この人本当に大丈夫か?」とつい心配してしまったほど(苦笑)。そして何より度肝を抜かれたのが、「ある戦いの記録」。こんな作品も書いてたとは。
2024/05/30
フリウリ
「後藤明生コレクション」4、3を読み、2、1に進むつもりで2冊を手にしたものの、ふと1を読み始め、終えてしまった。「ああ胸が痛い」では、武田泰淳の「司馬遷」からの引用がある。解説によると、後藤明生は「司馬遷」を読んで「楕円ヴィジョン」「楕円原理」なるものを体得し、世界や人生を見る目が一変したのだという。中心が必ず2つあるという楕円の「二者関係」という関係性を原理的に適応して、世界や人生を理解するということのようだが、人間関係への異様ともいえるこだわりの背後にあるものが、わかったような気がした。8
2023/03/18
ハイザワ
後藤明生的な「わたし」の立ち位置というものがあるのかもしれない。『笑い地獄』で書かれたような「仮装」、その場にはいるけれど参加していないという立ち位置は、『関係』や『パンのみに非ず』のような作品、さらには男が言葉を発さない団地という環境の中にも現れていると思う。当然それは行き当たりばったりな語りと無関係ではない。一つ一つの出来事は詳しく書かれているはずなのに、それがあらぬ方向に向かっていくにつれて、テクストの中に、冷笑的ではない形で規範から距離を取った「わたし」が潜り込むだけの隙間が生まれるのだろうか。
2017/09/11
感想・レビューをもっと見る