後藤明生コレクション5 評論・エッセイ
後藤明生コレクション5 評論・エッセイ / 感想・レビュー
erierif
後藤明生は曽祖父が宮大工で朝鮮が日本の植民地になった時点で移り住み現在の北朝鮮で生まれ育ったそう。ところが敗戦となった1945年8月15日からその故郷は外国となり2度と帰れなくなる。福岡に移り住み言葉と文化を覚えたところでまた大学から東京で言葉を覚えという経験があったと知る。その事をふまえると冒頭の『団地の中の花』もアイデンティティの話に変わった。彼の視点はずっと外から見つめるような、楕円の離れたところから静かに佇むような感じがする。『菊花の約』が素晴らしく上田秋成『雨月物語』はぜひ読みたい。
2018/03/06
amanon
シリーズ最終巻。読む前は「これで後藤氏の全仕事の大半は網羅できるのかな…」と思っていたが、とんでもない間違いだと気づく(苦笑)。「アミダクジ式」、「楕円形」などの独自の文学理論概念や、引揚者という特異な体験、そしてもちろんその作品世界…などまだまだ深掘りする要素があるということを改めて痛感。本書では、ロシア文学や戦前文学など、過去の文学作品について論じたものが多く収められているが、同世代やそれ以降の文学について書かれたものをもっと読みたかった。その意味で、大江の『小説の方法』を論じた「小説の構造」が貴重。
2024/09/07
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