鳥の巣 (DALKEY ARCHIVE)
鳥の巣 (DALKEY ARCHIVE) / 感想・レビュー
HANA
コギト・エルゴ・スムはもはや通じない。。前世紀末に大ブームを引き起こした多重人格ものだが、ジャクスンの手にかかるとそれらとはまた一風変わったものに仕上がっている。多重人格そのものではなく、自己というものの不安定さに焦点が当てられているような。そんな読後感を得るのは登場人物を極端に絞ったまるで室内劇のような構成や、参照のベッツィを読んだ感じから来ているのかなあ。著者の他の小説のように息詰まるような心理描写が素晴らしいが、一方後年のホラーには見られないような個所もあり著者の違った一面を楽しむ事が出来た。
2016/12/27
星落秋風五丈原
「アルジャーノンに花束を」発表前の作品(アルジャーノンは1959年、本作は1954年)であり、素材の選択眼とそれぞれのキャラクターの描き分けは素晴らしい。また、4つの人格が他人には見えない所でせめぎ合って主導権を奪おうとする様子はリアルで、なぜこのような分裂を招くに至ったかを少しずつ明かす過程もスリリングで面白い。これほどややこしい主人公に寄り添って、作品世界から無事抜け出すことが出来たのだろうか?と生涯を調べてみると、作者もかなり厄介な人物だったようだ。後年強烈な個性を放つ家もまだ穏やかだが崩壊の契機。
2016/12/25
キムチ
装丁が新しい為、読み終えて1954作と知り吃驚。多重人格物はビリーミリガンしか読んでないし、ジャクソンは初読み。厳密に言うと登場人物は3人、交わされる会話が持つ邪念と毒がこれでもかというほどに続く、部屋という密室空間で。ライト医師の邪悪さ、叔母の多重性(賢者⇒皮肉屋⇒不機嫌)と対峙するエリザベス。べス・ベッツィー・ベティは閉じ込められた人格なので強烈な3人の応酬に疲労感を覚える。結局、筆者はミステリー仕立てにしたかったようで真のエリザベスに人格は?のまま。だが1冊の本の世界で展開する上質のユーモアは最高。
2017/03/02
かわうそ
多重人格ものの先駆け的作品だけど、ある人格の視点になってストーリーがブツ切れで進行したり、人格入れ替わりコメディがあったりとさまざまなネタが投入されていて楽しい。他の登場人物も一筋縄ではいかず著者ならではの不安感・閉塞感も健在。面白かった。
2017/04/25
sssakura
実際に見ているかのような描写に、ドキドキして、頭がおかしくなりそうでした。またあいつが出てくるんじゃないか、これは演技じゃないかと、最後まで気が抜けず、終わってしまってもなんだかすっきりしない不気味さが残りました。疲れましたが、面白かったです。
2017/02/23
感想・レビューをもっと見る