手招く美女: 怪奇小説集
手招く美女: 怪奇小説集 / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
怪奇小説としては余りにも異色。何故なら怪異が起こったとは思えない文章が続くからだ。だが変質していく人の心理の不安定さが「何かが起こっているのではないか?」と疑わせ、読み手も不安に陥らせる。「幽霊見たりて枯れ尾花」の逆を突くような全く、新しいタイプの怪奇小説。表題作はまるで『シャイニング』のジャックの頭の中を覗いているような作品だ。自らを飢餓に陥らせ、作品を気に入らなくなる処ろか、その物語の主人公のモデルとなったエルシーをも憎むようになるポールは本当に憑かれていたのだろうか?そして起こった惨劇を描かずにい
2022/05/03
HANA
怪奇小説集。白眉は何と言っても表題作。ある貸家に引っ越した主人公の身に起きる奇妙な出来事…と一見テンプレート的な幽霊屋敷に見えるのだが、この小説のポイントは目に見える怪異が起きないところ。それが逆説的に本当に怖いのがこの小説を幽霊屋敷物として特に優れた一冊としている。他にも芸術とは如何なる物かを主題とした「ベンリアン」や会談がひたすら不快な「不慮の出来事」、怪異がむしろ救いとなる「屋根裏のロープ」等、怪奇小説の粋と言っていいような作品集でした。最大の分量を占める「彩られた顔」はよくわからなかったけど…。
2022/03/26
星落秋風五丈原
いやーやっぱり表題作ですかねえ怖かったの。見えないものに精神を乗っ取られるというか。「幻の船」時空を越えた邂逅。「不慮の出来事」なんでそうなっちゃうの感が。
2022/03/26
内島菫
どことなくもったいぶった言い回しと、女性の描き方にうかがえる男性優位な眼差しが気になった(時代を考えれば当然なのだが)。すべてがそうというわけではないが、怪奇小説は短いほど冴える傾向がある気がする。そういう意味で表題作と「彩られた顔」は、少々冗長に感じた。本書では芸術的な感性や極限状態にある精神、感じやすい気性を持ったどこか選ばれた人々が選ばれた怪異を体験しているよう。そうして彼らは精神のバランスを崩していくのだが、その辺りの、私には大仰に見える経緯がエンタメとして楽しむにはどこか芸術志向で、
2023/07/26
アカツキ
8作品の怪奇小説集。文章が合わなくて6作品を読み終えたところで本を閉じたけれど、家に棲む何かに侵食されていく男「手招く美女」はなかなか面白かった。シャーリイ・ジャクスン「丘の屋敷」が好きな人は楽しめると思う。
2022/06/14
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