廃用身
廃用身 / 感想・レビュー
おかむー
誰しもが一度は読むべき怪作。楽しさや感動はカケラもないが、介護の切羽詰まった現実、フィクションながらも妄想では片付けられない「Aケア」の可能性と漂う違和感。『たいへんよくできました』。物語を際立たせるために介護の“悪い面”を強調している嫌いはあるものの、それは誇張されているわけではなく現実に存在している“悪い面”であることがこの作品のリアリティなのだろう。軸となる漆原医師は理想に燃えた開拓者なのか、それとも冷酷な狂気を秘めた悪魔なのか。読み始めたら止まらない、読後の言葉にしがたい複雑な思いは特筆もの。
2015/02/20
里季
高齢者社会に起こる介護問題の提唱の話と思って読み始めたが、最初はいい思い付きに思えたその治療(処置?)法が、だんだんと狂気じみていると思うようになっていた。漆原のしたことは、限られたそのデイケアセンターの中でだけ通じるのだと思う。問題提起としてはうなずけたが、だめだ、これはいけない、耐えられない何者かが渦巻く。
2017/02/02
けい
読友さんの感想から手に取った作品。冒頭から殴られた様な衝撃が走る。葉真中さんが『ロスト・ケア』で書かれていた内容に近いものが10年も前の作品に書かれているではないか。本作で描かれる一つの解決手法、それを考え、実施する個人の本質、それに対する世間の反応を一種のシミュレートとして描いているのですが、これがリアルでドキュメントかと思うほどのこだわり(最後に著者略歴ページまで入れる念の入れよう、くしくも主人公同い年だわ)今あるかもしれない内容を、恐怖と興味を持って読み終えました。
2014/11/23
milk tea
廃用身の切断は究極の選択。将来、老人と介護のバランスがもっともっと崩れてくるとどうなるんだろう。この選択が「あり」となり、普通の日常になってしまうのだろうか。漆原医師が列車に飛び込み「頭は 私の 廃用身」という言葉を残し自殺する。ショッキングすぎる。 最後のページの著者略歴を読んだ時、 これはやっぱりノンフィクション?あー、よくわからないとなったが、何はともあれ読み応えのある一冊だった。
2019/05/07
metoo
お花畑を歩いていたら突然深い穴に落ちた、と思ったら全てが夢だった!みたいな読後感。脳梗塞などで麻痺し回復の見込みのない手足「廃用身」を切断する「Aケア」。切り捨てることでケアする人の負担を減らし本人の体の負担も減らす。私の老後は、体を切り捨てられるだけでなく、人として社会から切り捨てられ、切り捨てられた人々が一つの地域でオートマティカリーに生かされ、放置されるような事態になりそう。そんな薄ら寒い予感さえ覚える。これは、本書は、本当にフィクションですよね?
2015/10/29
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