吉原手引草
吉原手引草 / 感想・レビュー
chimako
ようようの読了。大人の一冊でした。神隠しにあったように消えた花魁 葛城を追って廓の周りで話を聞き込む。引手茶屋の内儀が、大籬 舞鶴屋の見世番が、番頭が、床廻しが、遣手が、馴染み客の御大尽が、幇間が、女芸者が、船頭が、指切り屋が、女衒が 廓の暮らしから遊女の有りよう、世間と隔離された色里の諸々を語り聞かせてくれる。何やらだんだんと核心に近づいているらしいと先が気になる。良く出来た話なのだが語り手が多くてまどろっこしい。最後まで読むと「なるほど」と納得できる。葛城の幸を願わずにはいられない。
2017/04/06
ふじさん
直木賞受賞作。久しぶりの松井今朝子の作品。なぜ、吉原一の花魁の葛城が忽然と姿を消したのか?葛城を知る番頭、番頭親造、遣手、幇間等の聞き取りから語られる廓の表と裏、更には隠されていた真実が少しずつ明らかになる。葛城の姿は、人々の語りから実像が少しずつ見え隠れするが、最後に分かる真実には少し心が痛む。吉原を舞台にしたミステリアスな展開で、最後まで楽しく読み切れたし、吉原の実態を知ることが出来て興味が広がった。松井今朝子の他の作品も機会があれば読み返してみたい。
2024/09/21
藤枝梅安
吉原の花形花魁の失踪事件を、関係者の証言を聞き書きした、という趣向。それぞれの視点で事件と関係人物を描き、「謎解き」よりもむしろ、それぞれの立場から「吉原」の掟やしきたりが読者にわかるようになっている。「とちめんぼう」など、昔ながらの独特な言葉も多く、辞書を引きながら読み進めた。事件の真相と聞き書きしている人物は最後になってようやくわかる。花魁の出自が事件の原因にもつながっている。内容的に、この作家の他の作品との関連が伺える。「聞き手」は、はじめは「並木拍子郎」かなと思ったほど。
2011/05/21
nico🐬波待ち中
吉原一の花魁・葛城の失踪事件の謎を紐解く物語。関係者16名から聞き出す、という展開の連作短編集。さすがに16名も出てくると読む方もちょっと疲れてくるけれど、終盤、真相に近づくにつれ読むスピードも加速した。総勢16名が自らの立場や葛城に対する思いを語る。よそ者が滅多に知ることのない吉原ならではの風習や暮らしぶりも分かり面白かった。16名の語る16通りの葛城は、賢く肝の据わった実に天晴な人となり。みんな勝手なことを語っているけれど、本当のところ葛城はどんな気持ちでいたのか、思いを巡らせつつ本を閉じた。
2023/06/10
nyaoko
ある男が江戸の吉原で働く様々な人達に、葛城と言う花魁の素性を問いかけていく。葛城が行方不明となった経緯を聞きながらも、そこに働く仕事の何と広く深い事。そして、売られた女達の郭での生活や、禿から新造、やがて花魁へと昇りつめるための女達の野望と、男達に夢を売るために見せない裏の姿。葛城は何故消えたのか?その理由を問い詰めて行くと、様々な謎が浮かび上がる。始めは馴染みのない吉原言葉も読み進める内にすっかり慣れてしまうから不思議。おまけにこれはミステリーだったのか!息を呑む葛城の真実、もう圧巻でした。
2016/11/29
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