君が降る日
君が降る日 / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
完全にどハマりしている島本さん作品の勢いは止まりません。なんだろう、この中毒性は。今作は作者さんが「死」をテーマに残された人々の再生をしっかりと切なさも持ち合わせながら描いています。ずっと陰がある感じながらも、読み進めていくうちに完全な絶望ではなく、僅かな光ながら、希望を見つけ、何かにすがりながらも前に一歩、そしてまた一歩と進み始める人々の姿は胸が苦しくなるぐらい切実に描かれています。全部で3編からなる短編集ですが、年下のイケメン高校生に言い寄られる年上女性の恋愛復活話が柔らかくてとてもステキでした。
2016/09/17
masa@レビューお休み中
強烈な愛である。愛とは尊くて、心地よいものというのは幻想で、堕ちていく、気色の悪さを伴ったものもあるのだ。ひとことで言えば、それは絶望というもので、代わるものもなく、変えることもできない。叶わない恋も、満たされない愛も伝える先がない。捨てられた仔猫のように、路頭に迷ってしまうだけだ。愛は絶対ではない。けれども、人は愛に縋ろうとしてしまう。抑えられない想いはどこにいくのか。隠せない愛はどうなってしまうのか。誰もが傷つかず、幸せになることができる恋愛なんて、どこかにあるのだろうか…。
2015/11/14
優愛
「私はこの人が、痛々しい。怖い。愛しい。自分には重すぎる。ぜんぶ本心だった。一つだけなんて選べなかった」恋人の死を受け入れる難しさをこの作品の中で目の当たりにした。後悔に苛まれ一瞬一瞬に過去が重なるたびに苦しくなって。針は時間が経つ度に深く力強く突き刺さるのに私は弱くなっていくだけ。このままではいつか突き破られることが分かっていながら抗えない私自身を悔やんでいくだけ。今の私に出来るのは、たったそれだけ――助けてなんて言えなかった。それでも私にはあなたが必要だった。君の温度が、優しさが今日も私に降り注ぐ。
2015/04/13
おかむー
ちょっとぶりの島本理生。二章に分かれた表題作と二篇の短篇からなる一冊は島本作品にしては柔らかめかな。『よくできました』。『君が降る日』、「長き夜の章」では亡くなった恋人を通じて繋がってゆくふたりの迷いを描きつつ浅めの結末なのだが、「浅き春の章」で孤独と迷いに心を抉る“いつもの”島本調でちょっと安心(?)。『冬の動物園』、年下のチャラい高校生に翻弄されながらも辛い失恋から癒されてゆく柔らかい物語は島本作品にしてはむしろ異色。『野ばら』、小柄な同級生との友情とも恋愛とも括れない微妙な関係と、彼の兄への憧れ。
2015/07/11
ふぅわん
【人は誰かの存在があるからこそ立っていられる】切なくも儚い3短編恋愛小説。恋人の死、恋人の友人との関係、痛々しくお互いに思い出すたび苦しく友人を通して恋人をみて求め、求めているけど、そこにあるのは愛じゃない「君が降る日」「冬の動物園」森谷君のような機敏に察してくれる男はいいなぁ。「野ばら」いつまでも心の中で思い続ける想い。想いは年齢とともに心の奥深くまで響くが感情は口にしないと届かない。どの作品も島本さんの優しい言葉がいっぱい詰まってる。涙が出ちゃう場面もあり。気分的にもピッタリなタイミングで読んだかも。
2019/06/15
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