番犬は庭を守る
番犬は庭を守る / 感想・レビュー
あも
灰色の町に灰色の風が吹き、色褪せた草原の葉叢が揺らされ乾いた葉擦れの音を立てる。相次ぐ原発の臨界事故により、生殖能力の劣った男が増え、数少ない「種馬」だけが精子を売って富豪になる未来。種なしの中でも更に下層の下半身を持つウマソー・イアザックは守衛をしながら、次々と想像したくない目に遭う。どう見てもディストピアな未来の悲劇譚なのだが、悲観的なのか脳天気なのか…名状しがたい彼のアイデンティティーに起因する故か読み心地は暗澹たるものではない。どんな世界でも人間は生きている。命を繋いでいくのだ。ラスト一文が秀逸。
2020/02/26
ぐうぐう
原子力発電所の臨界事故が続発する世界を描く岩井俊二の小説『番犬は庭を守る』は、3.11後に発表された気まずさを、始終漂わせている。岩井は、10年以上前に書き始められた作品と説明しているが、3.11によって現実が先行してしまったのちの刊行は、やはりいただけない。もちろん、ここには岩井ならではのオリジナルでユニークな設定が活かされてはいる。しかし、現実が想定を凌駕してしまった現在、この小説は警告の意味合いを無くし、現実の後追いを余儀なくしている。
2012/09/22
hutaro
殆どの男性が子どもを作る能力を失くし、限られた「種馬」だけが精子バンクに精子を売り裕福に暮らす中、ウマソーは「種なし」として底辺の暮らしをする。そんなウマソーが唯一できる仕事は、ある施設の門番だった。この施設がまた衝撃の施設だった。主人公ウマソーの性格が読めない。悲観的になったかと思えば急にハイになり通行人を襲ったり子どもを突き落としたりする。なんとも共感できないタイプの主人公。でもそうでもないとこんな世界では生きていけないのかもね。
2019/06/30
kei@名古屋
文庫にて読了
2020/02/19
ゆかーん
原発事故により、体に異常が次々と出てきてしまう未来の物語。決して遠い将来ではないと思えるような危機感を味わってしまった衝撃の一冊!
2012/10/05
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