去年の冬、きみと別れ
去年の冬、きみと別れ / 感想・レビュー
遥かなる想い
2014年本屋大賞第10位。 全編を覆う不気味な狂気の ようなものが怖い。 二人の女性を殺した木原坂 雄大の背後に潜む闇の ようなものは、どこから 来るのか? 姉朱里は一体何者なのか? K2クラブ、人形師、そして 殺人者の本を書こうとする 「僕」…登場人物の すべてが持つ狂気の ねじれに戸惑いながら、 暴かれた真実とは…やや 強引な結末を除けば、 著者の筆力に嵌まった…そんな 物語だった。
2015/05/09
抹茶モナカ
純文学の言葉で綴られたミステリー。芥川の『地獄変』のイメージに乗って、時系列を前後しながら、人間の暗部にも触れ、ラストに近づくにつれ、真相がわかる。贅沢な読書の時間を持てる本。でも、本を閉じたら、消えるような、軽さが致命的にあって、あと少しで名作なんだけど、という感じ。
2014/11/25
zero1
ミステリー?純文学?分類はヒマ人のやること。読書人なら内容に集中せよ。カメラマンの木原坂が女性二人を殺したとして拘置所に。裁判では死刑確定が有力。その彼を取材する男。狂気が渦巻く世界。K2とは何?繰り返しは何を意味する?「地獄変」(芥川)や「冷血」(カポーティ)が出てくるのには意味がある?そもそも取材しているのは誰?そして最大の謎は結末にある。14年の本屋大賞10位なのは難解だからか。幻冬舎創立二十周年記念書下ろし作品。私は謎解きに関する部分の質問に答えない。ネットで検索すべし。昨年映画化された。
2019/03/12
パトラッシュ
カミュの『異邦人』を意識した殺人者の心理を追求した小説と思わせて、最後に大逆転を食らわせる。エンタメ的には面白が、殺人事件で警察の捜査や裁判がこれほど杜撰なのはさすがにどうか。ミステリ読者からすれば作者の取材不足か、ストーリーを優先させて現実をねじ曲げたとしか思えない。そこに目をつぶっても300枚弱の短い作品に登場人物が詰め込み過ぎなのに加え語り手が複数のため展開がわかりにくい。キャラを整理して最後まで主犯の男が犯罪計画を告白する形ならすっきりした。アイデアは良いが小説としての構成で難ありというところか。
2020/11/15
たっくん
「覚悟はある?」編集者の依頼で、僕は本を書こうとしている。2人の女性モデルを焼き殺したとして死刑判決を受けた天才カメラマン木原坂雄大、僕は、犯罪心理を探るため、関係者を取材する。「私を助けて・・・」妖艶な姉・朱里、「狂気の人形を作ってみたい・・・」人形師・鈴木、幼馴染の加谷などみんな心に闇や狂気を潜ませている。雄大は、焼けるモデルの写真を撮っている。芸術とは、人間の犯す狂気だろうか。僕は、本は書けない、編集者はなぜ僕に依頼したのだろう。人間の奥底に潜む暗部を描くミステリー、そして驚愕の真相が明らかになる。
2013/12/04
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