きっと誰かが祈ってる
きっと誰かが祈ってる / 感想・レビュー
しんたろー
山田さん新作。最近は優れたSFで楽しませてくれていたが、久しぶりに社会派サスペンスに戻ってきた。と言っても『嫌われ松子の一生』『黒い春』のような長編ではないので(元々は電子書籍の連載)登場人物を絞ってテンポ好く一気に読ませてくれる。乳児院に勤める主人公を軸に、実親と暮らせない赤ちゃんの実態と、不遇の中で懸命に生きる少女が描かれていて、切なくて胸が苦しくなる。決して軽い話ではないが、内容の割にサラッと読めるのは熟練の技と言える。大好きな『天使の代理人』と同じく、子供達への愛を感じる最後は清々しい涙を流せた。
2017/10/11
いつでも母さん
乳児院で働くマザーの仕事と、そこを幸せになるために巣立ったはずの子のその後の話。きっと現実はもっと厳しいのだろうとも思う。全ての子が幸せなその後を暮らしている訳じゃないかもしれない。が、『その子が私を忘れても私はその子をずっと忘れない。幸せをずっと、ずっと祈ってる』そんなマザーの言葉は仕事以上の愛情を感じる。そんなマザーたちが沢山いて欲しい。行政の絡みも有るだろう。きっと人員不足でもあるだろう。綺麗ごとじゃないのもね・・ここで愛されていたことに気付いた多喜と多くの『たきちゃん』に幸あれ!
2018/01/30
utinopoti27
ふんわり暖かく、そして涙が滲む。様々な理由で、親から見捨てられた乳児を育てる乳児院で働く温子は、過去に自分が担当した多喜が、事故で里親を失ったことを知ります。彼女の境遇に不安を感じた温子は、ある行動に出るのですが・・。乳児期に注がれた愛情の分だけ、人は優しくなれる。誰しも自分の幸せを祈ってくれる人がいると思うからこそ辛いことにも向き合える。過酷な虐待に晒され、絶望の淵にたつ多喜のもとに希望の光は届くのでしょうか。山田流サスペンスにヒューマニズムを融合させる試みは、本作で一つの形を示せたと言えるでしょう。
2018/05/06
モルク
乳児院で働く保育士。2歳まで母親がわり「マザー」となり子供に愛される経験をめいっぱいさせる。子供の記憶には残らないが、愛情は潜在意識となり、その子の今後にいきる。誰かに愛される、どこかで幸せを祈ってもらえるというのはとても大事なこと。別れのシーンはいつでも切ない。最後は久々の号泣。くれぐれも電車やバスの中で読まないことをおすすめする。
2018/03/28
ゆみねこ
0歳から2歳までの親が育てられない乳幼児を預かる乳児院の保育士・島本温子。「マザー」と呼ばれる保育士がまさに母親代わりとなって愛情をこめてお世話をする。自分が関わった子供のその後を知ることはほとんどないと言われるが、彼女らの真剣な祈りは一人一人の心にきっと届いていると思えた。胸が熱くなり、涙で読了。お薦め本!
2017/11/06
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