口笛の上手な白雪姫
口笛の上手な白雪姫 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
短篇集だが、冒頭の「先回りローバ」を読み始めた途端に、私たちは小川洋子の世界、すなわち物語の王国に連れ去られることになる。この圧倒的なまでの想像力はいったいどこから来るのか。これこそまさに初原的な意味でのモノガタリそのものではないか。もちろん、それを支えるのは、これまた精緻を極めた語りである。篇中の8篇に共通するのは、孤独、寂寥感、ノスタルジーである。しかもそのノスタルジーは、あたかも過ぎ去った昭和への挽歌であるかのようだ。表題作もまたシンボリックな響きと、果てしない寂しさとを表象する。
2019/10/14
starbro
小川洋子は、新作中心に読んでいる作家です。『声』をテーマにした不可思議な連作短編集、小川洋子ワールドがヒタヒタと滲み込んで来ます。オススメは表題作の『口笛の上手な白雪姫』と『かわいそうなこと』の2作です。2月は、本書で読了です。28日しかない2月を乗り切ったので、年間500冊読破が見えてきました。
2018/02/28
さてさて
八つの短編からなるこの作品では小川さんのモノへのこだわりが不思議な世界観を作り上げていました。『一人一人の長い人生の、ほんの一日、ほんの一時期の話』と語る小川さん。『それが記憶に埋もれてしまうのはもったいないと私が思って、取り出して、本という四角い形の宝石箱の中にしまっておきました』とおっしゃる記憶の起点となるモノに光が当たる八つの物語。ひっそりと、静かに佇むように穏やかなその物語は、秋の夜長に読むのに相応わしい独特な味わいを持つ物語。“小川ワールド”を存分に堪能できる不思議な空気感に包まれた作品でした。
2021/01/20
風眠
その人は、過去に何を背負ってしまったのか、どんな心の動きがあったのか。そんな想像をしてみても答えはどこにも見つからない。小川洋子が描く人物は皆、謎めいている。男の子たちの息苦しい現実。彼らに寄り添う老人や「かわいそう」なものたち。刺繍や口笛で、赤ん坊に愛情を注ぎ続ける女たち。そして紙一重の悪意。彼らの時は止まったまま、外側の時間だけが流れていく。自ら閉ざした世界の中で、ただひとつの事をやり続け、そのためだけに生きる。それは仄暗い情熱。それは平静を装った狂気。ただひたすらに美しく完結した世界。一滴の毒。
2018/02/16
❁かな❁
まさに小川洋子さんワールド全開*小川さんの作品を読む時はいつも静謐で美しい密やかな世界に耳を傾けているような気持ちになる。独特で不思議な世界観にページを開くとすぐ惹き込まれる。エキセントリックな登場人物たちも、みんな愛おしい♡小川さんの温かさと包容力を感じる。綺麗で繊細な文章に耳をすませながら一文字も漏らしたくなくなるような素晴らしさ*「亡き王女のための刺繍」「かわいそうなこと」「盲腸線の秘密」「口笛の上手な白雪姫」の雰囲気が好き♡「一つの歌を分け合う」は特に切なくて涙しました。優しく切ない素敵な短編集♡
2018/02/17
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