四十歳、未婚出産
四十歳、未婚出産 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
今日的な問題を巧みに捉えて物語化してゆく手法はいつもながら上手いし、読んでいて痛快でさえある。今回取り上げられたのはシングルマザーである。主人公の優子は40歳を目前にして懐妊。もちろん、独身。生むにあたっては前途にさまざまな障壁が予想される。小説はそれらにぶつかり、乗り越えて行く過程を描く。私の当初の予想では、もっと生んでからの苦労が描かれるものだと思っていたが、実際には生むまででほぼ終始する。物語の終盤は何もかもがうまく解決しすぎて、些か安直なようでもあるが、それではリアルな苦難が描かれればよかった⇒
2022/07/24
鉄之助
「何歳になっても、若い女の子と結婚できる」と男は思い込んでいる。いるいる、こんな人。いや俺にもその気配。男の愚かな幻想が、炙り出されていた。「化石みたいな」パワハラ上司が、「だから女はダメなんだよ」と妊娠した女性を罵った。ユーモアたっぷりの筆致だったが、笑えない。いかにこの国が、子育てに冷徹な環境となっているか思い知らされるが、最後はホッとさせるようなエンディング。読後感は悪くなかった。世界中で「戸籍」があるのは日本と中国だけ、というのには驚いた。将来、本当に住民票だけで戸籍が無くなる日本になるのかな?
2023/07/08
ウッディ
海外出張の夜、イケメン部下とのアバンチュールで妊娠してしまったアラフォーの優子は、子供を産むか、妊娠を告げるか悩む。父親のない子を産むことに対する田舎での好奇の目、会社でのマタハラや部下の恋人からの疑惑と戦いながらシングルマザーになることを決断する。プライドや会社内外の偏見の問題、シングルマザーとしての不安などはわかったが、子供ができたことを知った時、主人公はうれしかったのかな?覚悟がなければ、二人の先行きは暗いような気がする。さらっと読みやすかったけど、主人公に感情移入できず、中途半端な読後感でした。
2018/12/19
Yunemo
結局は母性本能のなせる業。どうにも理解し難いところもありまして。40歳という年齢、子供を産む最後のチャンス、何だか父親不在のまま、逆説的に言えば父親は誰でもいいの、という疑問も残る優子の思考回路。女性の方は同じ感覚を持つものなんでしょうかね。という素朴な疑問を持ったままに。ただ日本の仕組み、家庭や子供を大切にしようとするとたくさんの壁が立ちはだかる、作中で述べられる言葉に頷いて。働き方改革が推進されてる今、確かに必要な施策が表現されてます。親子・夫婦関係、会社勤務のままでの子育て、戸籍の在り方等々幅広く。
2018/08/26
いつでも母さん
垣谷さんはつくづく上手いなぁと。四十歳?未婚?出産?どれも微妙なのを実に言いたいことをそれぞれに言わせている。お寺の凡庸さんが一番カッコイイかも。実際はこんなに上手くはいかない。やっぱり女性が働き続けることは難しかったり、それこそ出産・子育ては命がけだ。優子がいつか我が子に「あなたは私の子!」そう言えるだけで充分だが、この国はそんなに甘くはない。兄の再婚相手の子・リカルド君の立場もこの国の現状を伝えている。私ならどうしただろう。まぁ、垣谷さんが水野をそんな男として描いたので告げはしないな!(キッパリ)
2018/09/10
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