一睡の夢 家康と淀殿
一睡の夢 家康と淀殿 / 感想・レビュー
旅するランナー
家康vs淀殿。関ヶ原の戦い後から、大阪の陣まで。茶々時代の出来事も振り返りながら、家康が淀殿を追い詰める様子を詳細に描きます。信長と秀吉を反面教師として大義·理屈を大切にし、政権委譲を成し遂げた家康。父浅井長政、母お市の方、義父柴田勝家と同様、名誉のために戦い滅んでいく淀殿。武人の生きざまが変わろうとする時代の流れを読む器量の差が、徳川家と豊臣家の存亡を違えたことがよく分かりました。
2023/05/15
starbro
伊東 潤は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 書き古されたテーマではありますが、野望と苦悩、人間 徳川 家康を見事に描き切っています。安部龍太郎が描いたような家康&淀殿のロマンスはありませんでした。伊東 潤のMyBEST、本書で次回の直木賞受賞でも良いかも知れません。 https://www.gentosha.co.jp/book/b14755.html
2023/01/13
とん大西
滅びゆく栄華と来るべき安寧。関ヶ原から更に収束した時代の分岐点…大坂の陣。戦乱を掻い潜ってきた家康の人生も運命に翻弄された茶々の人生も全ては一睡の夢の如くか。…いやぁ、いい。人物像に奥行きが感じられます。家康はタヌキ親父でもなく、茶々は浅はかなわけでもない。きわめて常人であり、我が子を愛する普通の親であった彼ら。その葛藤や慈愛は等しい。違っていたこと、それは、一方は静謐の為に滅ぼす側であり、もう一方は誇りの為に散る側であったこと。家康、茶々。彼らの心の起伏が人間ドラマを生み出す。伊東先生、流石の筆致です。
2023/01/30
hiace9000
乱世に生まれ乱世を生きた家康と茶々。共に己が果てた先に描く未来とは…。それを極論すれば、生々しいまでの利己と我欲。虚飾無きリアリティさでそれぞれの登場人物達を描ききる伊東筆は、さすがこれまで幾多の偉人伝を綴ってきただけに峻烈。家康の卓越した策士ぶりとは裏腹の、凡庸な自己へのコンプレックス。茶々の気と機を読む鋭敏な感性を裏支えする、陶酔的なまでの"誇り"への執着。偉人然たる描きとは対極の、二人の「親として」のありのままを細密に積み上げて物語とした大作。家康大河の今年、大河はこの解釈に太刀打ちできるだろうか。
2023/02/03
のぶ
新たな家康像を見たような気がする。大坂の陣に至るまでを描いた作品だが、本作では老齢に差し掛かった家康と、死地に陥った淀殿がそれぞれの死の先に見出そうとした希望を描く物語。家康は二代将軍である息子・秀忠を揺るぎない天下人にするための体制づくりを急いでいた。一方の淀殿は愛息・秀頼の復権に固執していたのか?また家康は本当に豊臣家を滅ぼしたかったのか?攻守それぞれの思惑が交錯するストーリー展開に、史実として知っていたはずの歴史に新鮮さを感じた。いかにも伊東さんらしい発想に基づくロマンを堪能出来て良かった。
2023/01/01
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