奈落の水―公事宿事件書留帳〈4〉 (幻冬舎文庫)
奈落の水―公事宿事件書留帳〈4〉 (幻冬舎文庫) / 感想・レビュー
onasu
いつの世も変わることのないのが人間の欲、とは著者。シリーズ四作目の七編でも、欲にかられ、道を踏み外した者が…。 貧富の別なく人は欲を持つが、金があれば金にものをいわせ、反対に、ホントに金がなくて罪を犯してしまうことも。 そうしたことに対峙するのが、そうしたことから超然とした、あるいは飄々と生きる田村菊太郎。持ちつ持たれつの関係の金主がおり、暮らしに困らないようになっている故とも言えるが。 京に住み京の歴史と伝統にくわしい作者の自家薬籠中の題材を…、とは、またまた好解説でした。
2015/04/27
れいぽ
時代背景はおおむね文化十年代とのことだが、事件の大半は現代社会に起こっていることと大差ない。事件の悲惨さは同じなのだけど、義理と人情が喪失されつつある現代とは違った事件の受け止め方が興味深いです。清水寺から願をかけて飛び降りた人を飛落人というなんて初めて知りました。「清水の舞台から飛び降りる」は諺の表現だと思っていましたが、本当にあったことなんですねぇ…。
2011/12/27
kazu@十五夜読書会
ハードカバー読了済み(文庫もダブル登録で、共読本に反映させる)公事宿事件書留帳シリーズ4弾。菊太郎が居候する「鯉屋」公事宿の仕事の内容、交わされる京言葉に慣れてきました。① 闇の掟 ② 木戸の椿 ③ 拷問蔵 ④ 奈落のみず ⑤ 背中の髑髏 ⑥ ひとでなし ⑦ にたり地蔵 ⑧ 恵比寿町火事 ⑨悪い棺 ⑩ 釈迦の女 ⑪ 無頼の絵師 ⑫ 比丘尼茶碗 ⑬ 雨女 ⑭ 世間の辻 ⑮ 女衒の供養 ⑯ 千本雨傘 ⑰ 遠い椿 ⑱ 奇妙な賽銭 ⑲ 血は欲の色
2012/11/04
ベルるるる
短編集なので、すぐに読めるのだけど、どの話も、当たり前だけど犯罪が絡むわけで、人の欲や業を考えて、ちょっと憂鬱になりながら読んだ。でも、それでも、次々と読みたくなるのは、その欲や業こそが人間という事だからだろうな。
2014/09/13
きくちゃん
前回3作目の終わり方は今後の展開に微妙な影響を与えるかと思ったが、今回の7作はそんなそぶりは全く見せず、市井の話に徹頭徹尾こだわって進んだ。 やはりこうした話のほうがこの主人公には似合っているような気がする。 何と言ってもそこが安心して読めるシリーズものの魅力だろう。7作のうち個人的には歳月への郷愁と残酷さを実感させる「厄介な虫」が好きである。そんな風には進んで欲しくないと思いつつも、いかにも現実にありそうな筋立てが何とも言えない哀れを誘う。男はいつの時代でもロマンチストなんだろうな・・・。
2017/06/19
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