アンテナ (幻冬舎文庫 た 12-7)
アンテナ (幻冬舎文庫 た 12-7) / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
【Birthday book】読了1400冊目の初読み作家「田口ランディ」さんです。なんともいえない雰囲気の作風で、たたみかけてくるような勢いがあるわけではありませんが、最後までしっかりと読む側を惹き付ける魅力は十分に備わっていました。オカルトなのかミステリーなのか、SM嗜好の話なのか、家族愛や兄弟愛なのか、とにかくあらゆるジャンルのフルセッションな作品です。そういう意味では他作品では味わえない‘読み応え感‘は重量級です。哲学と心理学の‘せめぎあいバトル’も興味深く読めました。クセになる作家さんですね。
2015/09/30
HIRO1970
⭐️⭐️⭐️⭐️ランディさんの電波系3部作の一冊。通算ではランディさんは5冊目です。電波系3部作の中ではこれが一番良い作品のように思われました。それにしても取材力が光る独自なアプローチには毎回驚かされます。生きる事と死ぬ事がどう違うのかがメインテーマと思われるランディさんの作品はぱっと見はかなりオカルト的で一般受けは難しい感じがしますが、現代社会が最も不得意な数値化されない精神世界を描き出すことに成功している数少ない得難い作家さんだと思います。どんな悩みにも突破口があると思える読後感も良い作品でした。
2016/01/30
Tsuyoshi
15年前に妹が失踪した事で自傷癖の主人公や新興宗教、精神疾患、自殺等々壊れていった家族。妹の失踪に決着をつけたい主人公が知人に薦められて出会ったSM嬢ナオミ。彼女により自身に眠っていた本能が「開発」されていく事で道筋がつけられていく。過激な性描写やオカルトの多用など評価が分かれそうだが、哲学好きの頭でっかちな主人公がナオミに開発され変貌を遂げていく過程が面白く、引き込まれて読めた。
2018/01/08
ちょこまーぶる
通勤電車の中では後ろの視線を気にしながら読まなければならない一冊でした。性的描写が結構多くて、何回か後ろを振り返りましたね。現代の表にはオープンしずらい精神世界の問題や性の行為などを提起しているように感じて、読み進めていくうちに自分のモヤモヤした心をコントロールする必要がありましたね。そして、アンテナとは何を言い表しているのか?僕にはスッキリとした答えはわかりませんでした。また、記憶の奥底に一端しまってしまった出来事って誰にでもあるんじゃないかな~とも思っちゃいましたね。僕は一生閉まったまま派かな・・・。
2019/03/06
寛生
SM女王様のナオミが何とも輝いていて、羨ましくて、美しい。調べもののために再読。が、探していたものは見つからなかったと思う。鷲田先生もどこかで、〈生きる・死ぬ〉ことの〈私の主体性〉は見られず、生まれるにしても、〈私〉の意図を超えて、ツクってもらって、産んでもらい、命名され、やがて死を迎えるにも、究極の場合、無縁社会の中でたとえ孤独死で亡くなったとしても、やはり誰かに〈私〉が死んだと見られる。が、本書のように〈私〉の近くにいる隣人の〈生死〉が明確化できない場合、生き続けている者たちには狂気さえ生まれるのだ。
2014/04/09
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