虚貌 下 (幻冬舎文庫 し 11-3)
虚貌 下 (幻冬舎文庫 し 11-3) / 感想・レビュー
あつし@
顔であり全部(人格または人生)だった。顔、容貌について物語りは進みながら全部について問いかけてきて救われない別れの幕が下りた…。 「笑顔に勝る仮面はないということです」征彦のそれまでの半生は語られていないが、この言葉にたどり着くまでの苛烈な物語は、悲しみの結末が反射して想像を超える。「お前は生きろ」「お前は生き抜けぇ」事件の関係者の罪と罰、人生ドラマを克明に描きながら、唯一残された犯罪被害者の人生を読む側に想像せよと、問いかけてくる物語だった。著者4作目だが一貫して問われるものがある。ずっしり重い。
2017/11/04
セウテス
現場から採集されたのは荒の指紋、しかしすれ違い様に見た犯人と思われる男の顔、刑事滝中は荒とは思えなかった。やがて見つかった数ヶ月前に死亡していた遺体、なんと荒本人であった。実は本作のトリック、怪人二十面相ならではの物。確かに顔を他人と瓜二つにする事は、現代では可能である。しかし声や仕草、その人物を形づくるものを他人に納得させる事は出来ない。人間の描写や展開も、観客を意識した視聴率稼ぎに感じて残念に思う。荒という人物が、不運からのやり直しを始める人生を期待した。ミステリでは無い、犯罪ドラマとしては楽しめる。
2017/02/03
キムチ
ショウさん、モリさんの刑事コンビの世界から濁流の展開に。飛騨川の甌穴ダークファンタジーだった。悪のヒーロー活劇だわ。ホームズvsモリアーティ教授の滝での決闘シーンを思い出した♪荒の真相が見えたシーンからは一挙読み。読後「虚しき貌」の意を嫌がまでに噛み締めて納得。又、コミュニケーションの法則に縛られる人の業が随所で絡み付く。登場人物は清張ものの三倍はあるかも。三兄弟や山田、蒲池等は余分かな。主軸、守年父子の人生に憐れが滲む。復讐劇のヒーロー、名は気良…皮肉。
2015/12/03
アッシュ姉
★★★★執念を貫いた男の壮絶な物語だった。読み終えて深く嘆息。「彼」の心理描写はほとんど出てこないが、あれから一体どんな心情で生きてきたのだろう。思いを遂げるためだけに、費やした人生か。それをやり通すエネルギーは計り知れない。その強さを前を向いて生きていくことに充てて欲しかったとは言えないものが、「彼」の過去にはある。解説でトリックに賛否両論あると知るが、そこは全く気にならなかった。目が離せない展開が続いて、最後が駆け足だったのが残念。もっとじっくり結末を見守り、そのあと余韻に浸りたかった。
2014/03/14
オカメルナ
怒涛のごとくの一気読み。トリックが分かってもグイグイ読まされた。人物描写もくどくないのに、登場人物それぞれの人となりが掴める様にされていたと思う。虚貌という見慣れない単語にも頷かされた。終わり方も私には満足のゆく終わり方で好きな1冊となった。
2011/07/11
感想・レビューをもっと見る