ディスカスの飼い方 (幻冬舎文庫 お 35-1)
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ディスカスの飼い方 (幻冬舎文庫 お 35-1) / 感想・レビュー
ちょこまーぶる
ディスカスの飼い方をこれでもか・・・と指南していて、まるで専門書ではないのかと思わせるような一冊でした。と言うのは、全編を通して飼い方の内容が詳しくて、恋愛小説ではなかったの?という思いが強くなってしまったら、この本を投げ出してしまう人も多いのではないだろうかと、勝手に心配しながら読み進めました。でも、最後まで読んでみると、ディスカスの飼育に没頭するあまり、幸せにできなかった彼女由真への辛く切ない回顧が、読んでいて妙に心に響いてきて決して彼を否定する気持ちにはなれない自分がいましたね。
2017/05/27
yamakujira
ディスカスの飼育に傾注する涼一は、恋人とも別れ、会社も辞めて、ブリーダーをめざして繁殖に挑む。まるで専門書のように飼育の詳細を語りながら、2度と会えない別れた恋人の声を聞く涼一に、魚に憑かれた青年の狂気を見てしまう。後悔に苛まれるわけでなく、逃避先として元恋人の幻影を利用する涼一は、ディスカスと添い遂げるしかないのだろう。ディスカスはきれいというより妖しい美しさだと思うから、ホラーテイストを感じる物語にはふさわしいな。でも、最後にスピカールってなんだ、すべてをファンタジーにしたいのか。 (★★★☆☆)
2020/12/26
涼
際限のないディスカスへの傾斜。それはどうすることもできなかった。ディスカスの存在が自分という人間を形成する骨格となっている。僕が魚に夢中になることではない。僕がそれに満たされていることこそが、由真にとっての不安の正体だったのである。今になればわかる。世界と自分がフィットしない。何かがフィットしていない。この魚を通じて、世界と一体になれる。僕はそう直感した。無条件に信じることができた。
2018/12/03
akira
1つの世界に深く嵌まることが世界と向き合うことになるという部分で、「聖の青春」で描かれた将棋の世界との共通性を感じました。ディスカスの飼育法が細々と書かれ過ぎているかもしれないとは思いますが、それが「嵌まっている状態」の具現化であるわけですし、僕の父親が一時期ディスカスの飼育をしていたことがあるので(ほんの初心者レベルですが)用語に聞き覚えがあるものが多かったというのも抵抗が少なかった理由かなと思います。
2015/01/27
ねむりねずみ
静かな狂気という言葉が頭をよぎった。ハイコ・ブレハも「僕」も変わらないと思う。読み終えてから全部これは「僕」の夢なんじゃないかと思い始めた。その夢の意味は何なのかは別にして。
2012/12/21
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