悲望 (幻冬舎文庫 こ 25-2)
悲望 (幻冬舎文庫 こ 25-2) / 感想・レビュー
たぬ
☆4 こっわ。ストーカーこっっっわ。相手が明らかに迷惑がってるのに手紙を出し続けるって。留学先のカナダにまで追いかけていくって。「めげずにアピールを続けていればきっと振り向いてくれる」って完全に独りよがりの勘違いだからね? こっちとしては下手したら命の危険すら感じているんだからね? 田中康夫のあの作品を思い出した併録の「なんとなく、リベラル」は大学非常勤講師の厳しい勤務事情が知れた。
2023/03/30
柳田
すごい本。著者の院生時代のストーカーまがいの片思いがもとになっていて、カナダ留学まで追っかけて行ってしまう。『私小説のすすめ』には、誰でも生涯に一つは私小説が書けると書いているのだが、著者の人生はなかなか小説になるような題材に満ちていると思う。『もてない男』では告白する勇気がないというようなチンケな輩は相手にしてないと書いていたが、著者の学部生のころのことを書いた小説はけっこうなさけなく、陰性になって「女は押しの一手」思想を身につけて面白くなる。ふつうあそこで脈ないと思うだろ、みたいなとこをガンガンいく。
2018/07/11
記憶喪失した男
「非望」と「なんとなくリベラル」の二編からなる。特に「非望」は、状況描写は巧みで、必要な情報、心理描写の解説などはしっかり書いてある。
2014/03/12
Monsieur M.
小谷野敦の小説を読んだのは初めてだったが、失礼ながら予想以上に面白くて、少々驚いた。表題作はやはり私小説だったのね……。これはやはりストーカー以外の何物でもないだろう、ストーカー規制法の定義に該当するか否かは別として、社会通念上。「なんとなく、リベラル」も面白かったし、田中弥生の解説もよかった。
2017/06/13
ウイロウ
再読。表題作は私小説。大学院で出会った先輩院生に恋心を抱き、独り善がりの手紙を何度も送りつけ、果ては留学先のカナダまで相手を追いかける男。今なら完全にストーカーである。作者が花袋の『蒲団』について述べているのと同様、この『悲望』もまた、もてる男には理解されない作品だろう。逆に、片想いに苦しんだ経験を持つ者であれば、多少なりとも主人公に共感できるはずだ。男を拒む女の方も類型的にならず生き生きと描かれており、告白シーンでの電話のやり取りはとりわけユーモラス。併収作『なんとなく、リベラル』もゴシップ的な面白さ。
2014/06/01
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