うつくしい人 (幻冬舎文庫 に 13-1)
うつくしい人 (幻冬舎文庫 に 13-1) / 感想・レビュー
ミカママ
ある意味「再生の物語」なのだろうと思う。人生にちょっと疲れちゃって立ち止まっている主人公が、離島のリゾートで出逢った人や起こった出来事によって気付きをもらう的な。非常に西加奈子さんらしい作品。30過ぎて親がかりで一泊三万もするリゾートホテルに四泊もできる主人公に、なかなか入り込めず。わたしも何もせずに、日がないちにち海を眺めて暮らしたいよ。
2021/08/13
ヴェネツィア
一人旅を通じて得られた再生の物語。著者の西加奈子さんが行った島がモデルになっている(さて、どこだろう。瀬戸内海には高級なホテルがいくつかあるが)ようだ。この小説の着想はそこで得られたのだろうが、残念ながら安直な感じは否めない。島で出会い、百合(主人公であり、小説の視点人物)に大きく関わるのは、お金持ちの西欧人と元はアメリカの大学で物理学教授をしていたバーテンダーなのだが、その破天荒な設定自体が、リアリティを捨てている。また、百合の姉に対するコンプレックスとトラウマも、そしてその解消にしてもそうだ。
2024/08/12
さてさて
『私の行動の基本は全て恐怖から来ている』と思い、ギリギリの気持ちの中で生きてきた百合。それは、身近に接してきた姉と対峙する自身の心の整理をする日々でもありました。『美しいとは、なんなのだろう。姉の「美しさ」は、何なのだろう』と考える百合が旅先での出会いをきっかけにその答えを見つける物語。それは『満タンになっている』と感じる百合自身を見つめ直す物語でもありました。百合の張り詰めた心の叫びが読者の感情を激しく揺さぶるこの作品。その叫びは西さんの心の叫びそのものだったのかもしれない、そんな風に感じた作品でした。
2021/03/03
NADIA
「漁港の肉子ちゃん」と正反対のような重度の不安症を抱えた主人公・百合。ふと思いついて出かけた高級ホテルライフでであった変わり者のホテル従業員とヘンな外国人旅行者。「変な奴」と思いながら、彼らと過ごすことにより心がほぐれていく様にほっとする。この本で言う「うつくしい人」とは外見だけでなく、憧憬の対象となる人のことらしい。ずっと軽蔑していたと思っていたひきこもりの姉が百合にとって「うつくしい人」だったということに気づき、彼女は前に進めるようになるのだろう。自信を喪失している時は気分転換が必要(^^)
2017/06/12
新地学@児童書病発動中
他人の目を気にして生きている女性が、旅に出て人に触れ合うことによって、自分を取り戻していく物語。重たいテーマを軽快なタッチで読みやすく描いていくところに、作者の物語作家としての力量を感じた。百合のように他人の視線を気にしてしまう日本人は多いと思うが、百合はマティアスと坂崎というマイペースに生きている男性にめぐり会えて幸運だった。性欲がないのに性欲があるふりをするマティアスは個性的な登場人物で、読み手に強烈な印象を与える。引きこもりになってしまった姉と百合との心の葛藤が解決される結末は感動的で、涙が出た。
2015/08/16
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