東州しゃらくさし (幻冬舎時代小説文庫)
東州しゃらくさし (幻冬舎時代小説文庫) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
謎の多い東洲斎写楽の生涯を描く小説。写楽が浄瑠璃などの背景を描く絵師をしていたという設定は、彼が残した絵のことを考えると説得力がある。上方生まれの彦三(この小説での写楽)が、初めて江戸の土を踏む場面の描写に胸が躍った。活気にあふれた人の通り、隙間なく建ち並ぶ江戸の家など読者も彦三ともに、江戸の息吹を感じる。浮世絵師というより絵が好きでたまらない彦三の作品が、大評判になるのが面白い。彼の情熱が江戸の人々にも伝染したのだろうか。彦三は厳格なお上の岡場所の弾圧により歴史から姿を消す。この結末に哀感を感じた。
2018/05/20
新地学@児童書病発動中
松井さんは現在活動中の歴史・時代小説作家の中で一番好み。この小説も第一作目とは思えない完成度の高さだった。謎の画家と言われる写楽と戯作者の並木五兵衛の生き様を鮮やかに描写している。この小説の一番の肝は上方と江戸の文化の違いを歌舞伎や浮世絵を通して描いていることだと思う。理屈っぽい上方と格好よさを重んじる江戸の違いに五兵衛が翻弄されるのが面白い。歌舞伎小屋の描写は臨場感があり、役者の体臭さえも伝わってくる気がした。短いけど写楽の目を通して描かれる江戸の人々の立ち振る舞いも良かった。
2013/09/30
fu
松井今朝子作品5作品目読了。読みたいと思った動機をすっかり忘れていたが、読み進めていくうちに、写楽に興味があったからだと思い出した。写楽は一体誰なのか。なぜその正体が謎めいているのか。歌舞伎研究の専門家である著者だけに、歌舞伎が舞台となっている作品はより生き生きと描かれているように感じられる。上方と江戸の文化の対比も興味深い。
2015/09/13
onasu
写楽の謎も追う、てな感じで期待した運びとは、ちょっと違っていました。 上方の人気歌舞伎作家 並木五兵衛の江戸下りと時を同じくしていることに着眼、ということで、五兵衛と芝居道具の絵師 彦三の物語。それはそれでおもしろいのですが、どうも乗り切れない。写楽の謎も五兵衛の江戸下りも、はたまた蔦重と彦三の絡みも、どれも中途半端な感じ。 江戸っ子の気風も伝わってこない。阿波の斉藤某も出てきますが、何だったのでしょう。 好みもあるでしょうが、自分には今ひとつでした。
2013/04/16
Hugo Grove
江戸時代の芝居業のあり方、からくりがよくわかる。しかしフィクションの部分は弱く主人公がどのように開花して行くかを期待しいたのにシリキリトンボで、肩透かしをくらった。
2014/12/26
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