カリコリせんとや生まれけむ (幻冬舎文庫)
カリコリせんとや生まれけむ (幻冬舎文庫) / 感想・レビュー
zirou1984
3年前に森美術館で開催されていた「天才でごめんなさい」展は強烈だった。露悪的なモチーフを確信犯的に使った作品を鑑賞していくうちに見えてくる、その背景に存在する極めて常識的な問い。そんな美術家のエッセイ集である本作では、彼の生い立ちや家族の話が主になっており、その感性のベーシックがどのように培われているのかがよくわかる内容となっている。とりあえず著者同様にADHDの傾向がある息子さんの話が抜群に面白い。自由帳に「じゆうでないじゆうちょう」なんて書いちゃう7歳児とか最高じゃないですか。星の子ばんざい。
2016/02/02
HANA
エッセイ集。正直現代美術は商業性と選民意識故に苦手なのだが、この人の文章は素直に面白いと思う。いきなり最初のカレーの話から私小説家真っ青の家族暴露話が始まるかと思えば、ボールについての詩がいきなり始まるし、奥さんが代りに書いた部分もあるわで、まさに融通無碍。ただその奥には美術家らしい目の付け所が常に光っている。個人的に興味深かったのは以前ネットでも話題になった広島の空にピカッの一件。あと一見思想の問題めいた題名の「マルクスの奥にエロがあった」は男性が誰でも一度は通る道を描いた珠玉の一品だと思いましたです。
2013/08/12
harass
現代芸術家のエッセイ集。幻冬舎のPR誌に連載していたものらしい。露悪的な作風の画家で、変に気取るところがなく実に率直な内容。サービスがいいのか悪いのかよくわからないが等身大で語るのは好ましい。評論家とは違い実作者の視点の文章で、馴染みのある話題が多い。特に期待していなかったが無勝手流の文は面白い。表題のカリコリの意味、正直気にもしていなかったのだが、じつに脱力した。
2014/12/20
Tui
極めて物騒かつナンセンスな作風で何かと物議を醸す現代画家、会田誠。でも同じく現代美術界のスターダム街道をひた走る山口晃とともに私は大好きです。この本は、画家としての作品の解説や画壇批評も興味深い。でも何より読んでいて面白いのが、彼のご子息である寅次郎君に関する文章。いわゆる周囲に馴染めない気質ではあるのだが、著者自身が幼少時に実体験したことでもあることから全面的な容認とサポート体制が敷かれている(もちろんぶつかるけど)。世間におもねることなき制作活動そして子育て。全面的に応援します。
2019/08/27
夜間飛行
カバーの39人の美少女たちは清らかな滝に戯れ、のびのびと身体を遊ばせて幸福感に浸っている。少女たち一人一人の表情がなまなましく、本当にいそうに見えてすごかった。ライブの舞台に小さい息子さんもいっしょに出演した時、息子さんが客席に逃げて客をどん引きさせたというエピソードは面白かった。その後、会田さんと奥さんとで、どん引きした客を前に「カリコリ」と頭を掻く(または掻いてもらう)音をマイクに拾い続けたという。この「カリコリ」魔法によってあらゆる出来事を創作に変えてしまう会田さん。大場久美子で修行してたんですね。
2013/07/05
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