アダルト・エデュケーション (幻冬舎文庫)
アダルト・エデュケーション (幻冬舎文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
タイトルからも明らかなように官能小説である。この人は何作かこうした作品を書いているが、例えば『花酔い』が男性的な視線からのものであったのに対して、これはあくまでも女性の側から描かれている。12の短篇の集積からなるが、それはそのいずれもに共通する。そして、もう一つの共通点は作家自身のあとがきによれば、「自らの性や性愛に対して抱く罪悪感」だというが、そんなものは飛び越えているだろう。むしろアブノーマルな背徳の悦びこそがそうだ。ただし、文体がややもすると通俗的に過ぎるために、飛翔性が十分ではないのが残念である。
2020/02/18
❁かな❁
女性の心と体の渇きを感じる。自らの性や性愛に罪悪感を抱く女性たちの官能的な短編集。女性誌で連載されたもの。心が満たされていても体が満たされないのは淋しい。その逆も後で虚しさが残る。同性愛、セックスレス、略奪など。自らの欲望に忠実な女性たちの気持ちわかるところもある。「言葉はいらない」はびっくり。「聖夜の指先」の彼氏は嫌。合意の上で楽しむのはいいだろうけど。全編エロティックな場面が多いが村山さんの綺麗で繊細な描写は上品さを感じる。「それでも前へ進め」「誰も知らない私」の前向きなラストが良く応援したくなる。
2019/06/08
さてさて
『自らの性や性愛に罪悪感を抱く十二人の不埒でセクシャルな物語』と紹介されるこの作品は、確かに『不埒でセクシャル』と言える内容に満ち溢れています。しかし、そんな作品に描かれる彼女達は自らの内面に溢れる様々な思いを素直にさらけ出す場として、性を、性愛を求め続けていたのだとも思いました。『どうしてこの時代においてすら女性の側から性愛を欲することはタブー視されてしまうのだろう』とおっしゃる村上さん。この国では語られることの少ない性と性愛について、ある意味での問題提起をしていただいた、そんな風にも感じた作品でした。
2021/05/31
ゆいまある
子供だった頃、フロイトについて書かれたものを読み、こんなにセックスの事ばかり考えてるのはあんただけだよ、と思っていた。今、精神科医になって長くなり、高齢女性の妄想に、抑圧された性欲がいかによく現れるかを実感している。永く女性は、自ら性を語る言葉を奪われていた。短編集だが、愛より恋より官能小説である。女性の手で、抑圧された性欲の奥底を見ようとする試みは是非もっとやって欲しい。言葉を持ち得なかった人々の為にも。ツッコミどころとしては京都の人は京人参とは言わん、金時人参や。SSRIの副作用の対処常識やで、など。
2019/11/02
かずー
女性目線の官能小説。12の短編集になっておりさくっと読めた。恋愛要素もあり女性の心情がよく描かれている。登場するのは不幸な女性が多い印象。女性の裏の部分をのぞけるのがよかった。
2020/09/03
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