吉原十二月 (幻冬舎時代小説文庫)
吉原十二月 (幻冬舎時代小説文庫) / 感想・レビュー
ミカママ
【遊郭部・課題】直木賞を取った『手引草』よりも後に書かれたものだが、時代的にはあちらよりも半世紀ほど前の遊郭モノ。同時期に入廓したふたりの昼三花魁(なんて言葉も自然に出るようになったのは、部活のおかげ・笑)の物語。ふたりの性格や容姿が、読み進むにつれて次第に私の中でくっきりと映像になっていく。読後感も大変よろしい。松井さんの知識と取材力に敬服。
2016/09/30
じいじ
この作家は、直木賞受賞作『吉原手引草』につづく2作目。江戸・吉原の一年を月ごとに綴った、とても粋で風情を感じさせる読物。「舞鶴屋」4代目主の目線で、ふた昔前の吉原を語るという、著者の着想も解りやすくて良かった。幼くして売られてきた二人の娘が、いっぱしの人気花魁に成長する物語です。花魁たる者は、男の情にほだされたと見せかけて、男に惚れさせる…など精神面の手練手管と、茶の湯、生け花、三味線、筝…などの芸事を徹底的に仕込まれます。容姿も性格も違う二人の娘が、競い合って店の看板を背負う花魁物語は面白かった。
2022/09/26
miri
吉原の、同じ妓楼の二人の花魁の物語ですが、語りは楼主。育て上げた性質の違う花魁の成長と吉原の風俗が目に新しい。一年を十二月に分け、その月の行事を華やか豪勢に執り行う花魁の、白粉と金子の匂いが漂ってくるような魅力にクラクラしてきます。色恋と見栄と粋、そして何よりどう気持ちよくお金を落とさせるかの手練手管は今にも通じるものがあるとつくづく。当時の自立した女性である花魁が、制限がある中で力と知恵を振り絞り、道を切り開こうとする姿は勇ましく、またそれを表に出さずに成し遂げるというのも粋。
2020/04/22
らすかる
吉原花魁ものなのに何とゆう爽やかさ。花魁胡蝶と小夜衣の2人のバトルもドロドロしてなくて気風の良い潔さ。正月から師走までを12編のものがたりとして2人の花魁の成長と吉原の移り変わりをドラマを観てるように読み終えました。生臭くない遊郭のものがたりはNHKの大河ドラマでやってもおかしくないかも!全く正反対の胡蝶と小夜衣。自分に似た方に肩入れして読むと最初は胡蝶だったけれど段々と小夜衣にも似たところを見つけ、どちらも好きに(*^_^*)なのでラストは安堵しました🎵
2019/07/15
タツ フカガワ
直木賞『吉原手引草』を思い出した1冊。というのも、舞台は同じ吉原の大籬「舞鶴屋」、物語は主人庄右衛門の語りで進んでいく。妓楼で一番を競う小夜衣と胡蝶は、少女のころから手塩にかけて育てられた花魁で、容貌も性格も対照的。その二人の舞鶴屋での暮らしを一年十二か月になぞらえた話は人情話の趣で、苦界のなかでの心温まる話だけれど、最終章はミステリー仕掛けもあって、二人の花魁の意外な転身に驚かされました。松井さん、こういうオチうまいですね。
2017/10/20
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