海よりもまだ深く (幻冬舎文庫)
海よりもまだ深く (幻冬舎文庫) / 感想・レビュー
なゆ
是枝作品だなぁとしみじみ思わせてくれる、家族の話。自分の事しか考えてないダメ男と、一人暮らしの母親と、元妻と、たまにしか会えない息子。やっぱりこれは映像で観たい。樹木希林&阿部ちゃんで。それにしてもここまでクズなダメ息子でも、母の愛は海よりも深いのだ。ベランダのみかんの木を「何かの役には立ってんのよ」と見守る姿が重なる。親はいつまでも変わらず元気に実家にいるものだと思いがちな私にはチクチク。未練タラタラ男の良多は、ここから少しは変われるのだろうか。ツッコミどころは、町田くんのあり得ない程の人の良さ。
2018/09/25
しいたけ
呆れて眉をひそめて、クスッとなって噴き出して、しんみりしてドキドキして、切なくなってポロリとこぼれました。ただポロリとなったのが質屋にさせられたという、私大丈夫か疑惑。映画も観たいです。映画ではどこでポロリするのか楽しみです。トンチンカンなところでひとり泣いてたらどうしよう。『誰かの過去になる勇気を持つのが大人の男ってもんだよ』『幸せってのはね、なにかを諦めないと手にできないもんなのよ』誰かのために諦める経験をするとイイ女になれると、若いときに言われたことがあったっけ。良多のあけすけな純情が可愛いかった。
2016/05/22
Ikutan
ノベライズ本は登場人物のイメージが分かるので、映画を観ていなくても、映像が浮かんできて読みやすい。是枝監督が描く家族の物語。ダメな父親って、最近読んだ作品の中でも多いのですが、この作品の主人公良多はその中でも一番かも。自称作家といいながら、15年間全く執筆できず。ギャンブル依存でお金を使い果たし、挙げ句の果てには、バイトの探偵事務所で働いて得た秘密を恐喝に利用したりと、もう、どうしようもない奴だ。それでも、大器晩成と信じ、元妻とのやり直しを願う母親。最後はその母親の愛情の大きさにしみじみとさせられました。
2016/08/09
ケンイチミズバ
年を追うごとに父親の存在自体が煙たくなっていった。こうはなりたくない、と思いながらも、父親の轍を踏んでいる自分をまざまざと見せつけられてるような気がしてたのかもしれない。「慎吾は大きくなったら、なにになりたいんだ?」「公務員」間違いなく父親のようになりたくないからだ。「パパはなんになりたかったの?」「なりたいものになれた?」「パパはまだなれてない。でもな、なれたかどうかが問題じゃない。大切なのはそういう気持ちを持って生きてるかどうかなんだよ」良多には少なくとも口にする資格はないし、自分にも思い当たるなあ。
2016/05/06
おさむ
映画がとても心に残ったので読了。忠実なシナリオのようでした。年老いた母親と別れた妻と息子とのある嵐の日の邂逅。「なりたかった大人になれた?」40代半ばの男の悲哀というか、情けなさがいいですね。是枝監督の前作品「歩いても歩いても」と重なるエピソードも幾つかありますが、そこは許しましょう(笑)。
2016/07/24
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