骨を彩る (幻冬舎文庫)
骨を彩る (幻冬舎文庫) / 感想・レビュー
さてさて
「骨を彩る」というこの作品。そこには、五つの短編それぞれに何かしらの欠落を感じながら生きている人々の姿が描かれていました。決して派手な印象を与えないこの作品。何か大きなことが起こるでもない普通の日常が淡々と描かれていくこの作品。そんな物語には、津村や他の主人公たちが欠けた空白をどんな風に埋めて生きていくのかが丁寧に描かれていました。『一つの季節の臨終』といった絶妙な”比喩表現”の数々で魅せながら、それでいて登場人物たちの細やかな感情のあり様を全編にわたってしっとりと描き出したとても味わいのある作品でした。
2022/02/19
しんたろー
彩瀬さん7冊目。早くに妻を亡くしてシングルファザーになった津村、津村が一時想いを寄せた光恵、光恵の同窓生だった玲子、玲子が旅先で知り合った娘とチャットしている浩太郎、津村の娘の小春……緩やかに繋がる5つの短編は、大きな事件は起こらないが心情をすくい上げる筆致で読ませる。誰もが抱えているであろう言葉にできない「モヤモヤ」を絶妙な文章で表現していて「判るなぁ…」と感じ入った。特に、男性の津村、浩太郎の想いが女性である著者に「何で判るの!?」と驚嘆した。小さな希望が漂う終わり方も余韻を残してくれて好みだった。
2019/03/25
エドワード
哀しみや負い目を持たずに生きている人間はいない。娘の小春と二人暮らしの津村。妻を病で亡くして十年、夢にたびたび妻が現れる。新しい恋人が出来たから?悩める津村が別の章で能天気な不動産事務所長として描かれるのが面白い。津村の相手の光恵、高校の同級生たちの悲喜こもごも。その一人、玲子は同窓会の幹事を務める快活さの裏に複雑な親子関係を抱く。<私の体を包む世界は脈絡がなくてばらばらだ。>との感慨が重い。中学生の小春が悩む、<当たり前>が違う生徒たち―宗教信者や父子家庭に鈍感な男子―との距離の取り方がいじらしい。
2017/04/04
ken_sakura
とても良かった。当たり(^。^)登場人物が主人公を持ち回る五編の短編集。静かにパンチのある心象の物語。「指のたより」父子家庭の父親津村が亡くなった妻と夢で会う。「古生代のバームロール」津村と良い仲になりかけた光恵と高校の同級生だった真紀子の今。「ばらばら」光恵の同級生だった玲子は生みの父親の墓に初めて墓参りする。「ハライソ」津村が営む不動産屋の営業槌田浩太郎は富士山に登ったことがない。「やわらかい骨」3歳の時に母を亡くした津村小春の骨には黒いしみがある。おもしろ本棚の会員の方が褒めていたので手に取った
2018/10/07
akiᵕ̈
五編がゆるやかに繋がっている連作。タイトルの「骨」から、こんなにも色んな表現の仕方、感じさせ方があるんだとその感性がすごいと感じました。骨はずっしりしているようで脆くもあり、大切なものを守っているものでもあり、どこか1つでも欠けていたらその機能を果たさないだろうし、でもなかったらなかったで他の何かが補ってくれ、繋がっているからこそ上手く稼働するし。小春の、父親や友達、初めての彼との関係もそんな風に多様の中で自身を見つめ成長していく姿はまさに彩り豊か。小春を温かい気持ちで見守っての読了でした。
2020/12/08
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