近所の犬 (幻冬舎文庫)
近所の犬 (幻冬舎文庫) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
いやあ、面白い本だった。近所の犬とさっと仲良くなってしまうと作者の姿勢に共感できる。可愛い犬や猫は、それぐらい魅力のある生き物だ。事情があって犬や猫を飼えない時は、ここに書いてある借飼(作者の造語)を行うのが、良い方法だろう。近所のさまざまな犬や猫が出てきて、姫野さんと仲良くなる様子が、ユーモラスに時に切なく語られている。即物的な独特の文体が面白い。突き放した視点で自分のことを描くところが笑えた。例えば直木賞受賞の記念の撮影時に、めかし込まずに普段着ででかけてしまうところなど、本当に可笑しかった。
2018/01/19
ゆいまある
「昭和の犬」の続きとも読めるようなエッセイ風私小説。この人は直木賞も取った人気作家だというのに、本の中では賃貸物件に住み、車も持たず、糸の飛び出た古いコートを着て、金持ち自慢も、有名人と知り合い自慢もせず、私には犬を飼う資格がないんですと言い、近所を散歩する犬達と密かに心を通い合わせて幸せに浸る。「リアルシンデレラ」ばりの自己肯定感の低さだが、この謙虚さに心洗われる思い。時々蘇ってくる毒親にネグレクトされてた子供時代の回想が辛い。いつかカオルコさんにもうつの闘病記書いて欲しいんだが、叶わないだろうな。
2019/11/24
ワニニ
【生きもの週間】事情あって飼えないが、犬好きな人は「借飼」すると良い、カオルコさんは言う。好みの近所の犬を見つけ、準備を整え声を掛け、きちんとした作法をもって犬と戯れるのである。上手くいけば、大変な幸福感も味わえる。更にその犬なり、飼い主なりの心の内をカオルコ流に分析、想像し、それらを通し自分の世界を見つめていく。エッセイ風に書かれ、観察眼鋭く、とても面白いが、やはり犬や飼い主との距離感の妙や切なさも顔を出し、しみじみする。借飼は、実は簡単ではない。人生と同じで、努力も要すし、困難も付きまとう。深いのだ。
2018/01/29
コジ
★★★☆☆ 遠くの風景をあたかも自分の庭の一部のように眺めるのは「借景」で、近所の飼い犬をあたかも自分の愛犬のように可愛がるは「借飼」(著者考案)。著者が可愛いと思う犬の基準がほぼ自分と同じで著者に親近感を覚えた。犬とも暮らしたいと少なからず思った身としては、この「借飼」という他所様のご息犬との適度な距離を保ちつつ触れ合うアイデア是非とも利用させて頂きたい。この本の最大の魅力は犬達であることは言うまでもないが、テンション高めで「主題の犬は何処に行った?」となるぐらい話が拡散する点でも楽しく読ませてくれた。
2018/04/11
なるみ(旧Narumi)
読友さんのレビューのおかげで読めた一冊。著者姫野カオルコさんの「はじめに」「あとがき」には本書は私小説とのこと。エッセイのような、姫野カオルコさんが知り合ったご近所等のワンコ達とのふれあいや思いを書いた一冊でした。江戸っ子な雰囲気のおじいさんが飼っている黒ラブラドール・レトリバーのラニのエピソードはじめ、印象深い一作でした。同じく姫野カオルコさんが書かれた『昭和の犬』にもチャレンジしてみようと思います。
2018/07/05
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