バスは北を進む (幻冬舎文庫)
バスは北を進む (幻冬舎文庫) / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
北海道はオホーツク出身の作者さんの見事?な道民のためのエッセイです。とにかく最初から最後まで北海道感がハンパなく、北見、美幌、女満別など馴染みのある地名がどんどん出て来て、せきしろさんの世界観に割り込むようにグイグイ読んでしまいました。道東を舞台に描かれている'あるある'なネタに、思わずこちらも「うんうん」と頷いてしまったり、作者さんの若い頃の淡い想い出にちょっと胸がしめつけられたりと、すっかり虜になってしまいました。こんなステキな文化人が我らが北海道にいらっしゃったとは恥ずかしながら、知りませんでした。
2019/06/15
おさむ
同世代で、同じ北海道育ち(道南と道東とやや違いはあるが)の著者の思い出がたり。あるあるを連発しながら、読み進めるうちに、恥ずかしさとともに過去の自分を思い出します。ナイーブさや純真さ、残酷さ全てが若かかったといえばそれまでだけれど、今もなお心の奥底に沈殿しているのは何故なんだろうとも思ってしまう。せきしろさんは初でしたが、1行詩と短文の組み合わせがなんだか音楽みたいで面白いですね。文章のトーンや言葉のチョイスのセンスは同世代の燃え殻さんを思い出しました。西加奈子さんの解説が秀逸です。
2019/06/30
おいしゃん
思った以上に良かった。 道東を舞台にしたセンチメンタルな詩&短文集だが、モノクロの荒涼とした風景に、淡い色付けをするような言葉たちで、読んでいて優しい気持ちになれる。
2020/09/27
ちぇけら
花壇でマガジンが第2の人生。スマホスマホせきしろスマホスマホスマホスマホの夕方の電車は発車した。記憶の底によどんだ断片を取り出そうとしても、できなかった。たくさんつらかったし、たくさんたのしかった、はずなのに。せきしろさんの語る記憶や思い出が、ぼくにとっても懐かしくて、大切だった。ぼくにはなにもない、と思うときがある。花壇に捨てられて雨でよれている週刊少年マガジンような、そんな不安な心もちの日は特に。傷んだこころにせきしろさんの文章はおおらかで優しい。思い出せなくても、ぼくにも確かに昔はあったのだ。
2019/07/26
ようへい
夏の日に入る露天風呂が好きだった。小学校の頃、ほぼ毎日のように通っていた夏休みのプールを思い出すからだ。楽しかったあの頃を思い出し、幸せな気分になった。そのうち、何か他の事も思い出してみようと思った。小学校に限らず、忘れてしまった数々の事々を。そうするうちに、思い出は太陽の光のように輝いているものだけではなく、自己嫌悪で真っ黒に塗りたくられた暗いものもある事を思い知る。いや、そっちの方が遥かに多かった。そうなって以来、露天風呂で夏休みのプールを思い出すことはなくなった。ノスタルジーはパンドラの箱である。
2024/01/19
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