ミ・ト・ン (幻冬舎文庫)
ミ・ト・ン (幻冬舎文庫) / 感想・レビュー
やすらぎ
嬉しいときも悲しいときも、窓辺に花を添えて皆に愛を届けたい。夕陽に染まる毛糸を紡ぎ、帰りを待つ。ここにあるすべてのもの、ひとつひとつの輝き、沈みこむ喜びや切なさ、すべてを包みこむミトン。傷つけば繕い、温めてくれる。たった一粒の木の実が朝露で清められ、若葉を広げて多くの実をつけるまで、ずっと一緒にいられたらいいのに、時はうつろってしまう。この世界は美しいはずなのに、平穏に生きられる場所は限られている。マリカは今、やさしい雨に濡れている。どんなに遠く離れても結ばれている安心。ミトンがあれば気持ちは伝わるから。
2024/01/31
SJW
バルト三国のラトビアがモデルとなっているルップマイゼ共和国において、美しく、心暖まり、悲しい、小川さんらしい童話のようなお話と挿絵。マリカは3人の兄弟と外で遊ぶことが好きな女の子。伝統的な糸紡ぎや手袋(ミトン)を12才までに編めるようにならないと国民として認められないという決まりがある。そんな時に気になる男の子が現れるというマリカの一生のお話に一喜一憂して引き込まれてしまった。
2021/03/28
Ikutan
昨年読んだエッセイで印象に残ったラトビアの言葉「辛い時こそ朗らかに笑いなさい」が心にグッと響いた物語。人が殺されたり、どこかへ連れていかれたり、乱暴されたり、そんなことが日常茶飯時だったルップマイゼ共和国。それでも、笑顔を絶やさなかった一人の女性、マリカ。美しい手袋をはめる文化があるその国では、ミトンは、防寒具だけではなく、特別な装身具になるという。ミトンに纏わるエピソードを中心に描かれたマリカの丁寧な暮らしぶりが心地よく、美しい文章と素敵なイラストが心に染みて優しい気持ちになれる一冊でした。
よしのひ
ラトビア共和国をモデルにしたとされる優しい物語。所々に現れる挿絵もまた優しい。マリカの誕生から旅立ちまでを追った物語であるが、例え東京の雑踏とした電車内でも心温まる世界に浸れる力がある。また、ミトンの話であるものの、飲食物が柔らかくてキラキラしたものばかりであるから、心惹かれないわけがない。黒パンもキュウリのピッピも食べてみたいし、白樺ジュースもどんぐりコーヒーも飲んでみたいものだ。構えて世界観に入ろうとしなくても素直に文字追えば、いつの間にかルップマイゼ共和国に着くだろう。大人の絵本ともいえる作品。
2021/12/11
アクビちゃん@新潮部😻
【選書サービスの1冊】母親から娘へ受け継がれ、結婚する時はながもちいっぱいしてお嫁にいく、お祭りや冠婚葬祭時にも使われ、防寒だけではない手袋、ミトン。そんな素敵なミトン文化があるラトビア共和国を元にしたお話し。マイカという女の赤ちゃんが産まれ、成長する過程を通し、美しい景色の中だけれども過酷な冬の様子や、文化、哀しい国の運命が描かれています。戦争に行った旦那さんの片方だけのミトンが、郵便で届けられラストに向かうにつれ涙が溢れました。悲しいのではなく、今 あるもの全てが幸せだな〜と気付かされたから。
2021/02/28
感想・レビューをもっと見る