料理通異聞 (幻冬舎時代小説文庫)
料理通異聞 (幻冬舎時代小説文庫) / 感想・レビュー
三代目 びあだいまおう
江戸で最も成功を遂げ現代にも至る料亭八百膳、四代目善四郎の一代記。飢饉や大きな災害がついて回る江戸の気質や文化、そして『食』を背景にしながら、善四郎が江戸一番の料亭へと飛躍させていく物語。伊勢参りやその他、肝心と思われるシーンは端折られていて、期待してページをめくると「あれ?そのシーン終わってるの?」と肩透かしを何度もくらう。おかげで読み手は抜けたシーンを想像力で補わざるを得ない。意識した構成なのだろうが想像力に難ありの私は、割愛シーンを活字で読みたかった。似た話なら『みをつくし料理帖』に軍配かな‼️🙇
2024/05/23
まる
美味しそうで、しかも手間のかかったお料理の数々だった。料理人として優れていただけでは八百善の繁栄は築けなかったかもしれない。善四郎の親切で魅力溢れた人柄がなかったら多くの才人達を惹き付けなかったかもしれず、彼等の様々な後押しがなかったら「料理通」があれ程の成功を修められたかどうか。そう思うと成功を修めるには技術と優れた人柄が必要と思われ、それはどの分野にも共通だと思った。著者の溢れ出る知識を盛り込もうとするあまり、小説としての面白さが削がれる部分を感じるのが残念だった。
2022/01/15
なおこっか
『百川』と同時代、精進料理屋から身をおこし、文化人のサロンとしても栄え、『料理通』を著した料理人の店、八百善。集うのは南畝、抱一、鵬斎、文晁、時に京伝、崋山も。主人公は基本好人物として描かれ、かつて『そろそろ旅へ』に沈殿した深い業のようなものは薄い。むしろ勤め人でもある南畝の在り方に関心がわく。この人々との関わりから、書物を著そうとする動機として、食べれば消えてしまう料理を絵のように残したいという欲求と結びつけたのは上手い。それにつけても料理の数々の美味しそうなこと。
2021/10/29
nyanlay
八百善の店の名前は他の時代小説で見るけど、どちらかと言うと金持ち相手の庶民には縁がない店、と言う書かれ方が多いと思う。店の成り立ちやらやはりそれぞれ物語があるんですね。
2020/04/23
陽ちゃん
時代物によく出てくる「八百善」ですが、最初から高級料理店としてスタートしたのではなく、精進料理のお店が元だったのは知りませんでした。その精進料理店を、高級料理店の代名詞とも言える「八百善」に大きくした善四郎が主人公ですが、人を惹き付けるものを持っていたようで、彼に手を貸す人たちの顔ぶれが、酒井抱一・太田南畝・谷文晁・渡辺崋山といった豪華メンバーで驚きました。彼が多くの人と交流し、店を大きくできたのは、妻のお栄さんがどっしり家を守っていてくれたからでしょうね。
2020/09/02
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