はじまりの島 (幻冬舎文庫 や 47-1)
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はじまりの島 (幻冬舎文庫 や 47-1) / 感想・レビュー
ナルピーチ
誰もが知っているあの“ダーウィン”が探偵役を担う異色のミステリー小説。彼が若き頃、『ビーグル号』での公開中に立ち寄った“ガラパゴス諸島”を舞台に、船のクルー達が何者かの手によって次々と殺害されていく…。序盤は彼が着想した『進化論』の元ネタにもなったガラパゴス諸島での海洋生物達との出会いをロマン溢れる筆致で描いてありとても興味深い。中盤に突入すると事件のオンパレード!不可解な事件にダーウィンらしい推論を立てた名推理を楽しみながら読む事が出来た。歴史的な背景とミステリーを上手く融合させてとても楽しめる一冊!
2023/07/08
おうつき
若きチャールズ・ダーウィンがイギリス船に乗ってたどり着いたガラパゴス諸島。そこで起こる連続殺人を描いたミステリ。ダーウィンが探偵役を務めるというのに惹かれて手に取った小説だが、予想以上に面白かった。本格ミステリとしての楽しさもあるが、後に「種の起源」を発表するダーウィンのルーツを探る歴史小説としても読み応えがあった。謎解きと作品のテーマが密接に絡み付いていて、最後は霧が晴れるような心地よさに包まれた。著者の作品は「ジョーカーゲーム」くらいしか知らなかったが、他の作品も読んでみたいと思う。
2023/06/07
hukkey (ゆっけ)
当時の宗教信仰にとって異端だった「種の起源」をダーウィンはなぜ発表するに至ったのか、かつて訪れていたガラパゴス諸島に何か決定づける出来事があったのではないか。面白い着眼点に惹かれて夢中で読み、本を閉じたら感嘆のため息が出た。自分が正しいと信じ込んでいた行為は、思わぬ形で他の人間や生物に影響を与えている。育ってきた文化や環境が覆された末路を表現されてみると恐ろしい。殺人の理由は明らかに間違っているのに、殺してはいけない明快な説明ができない。陳腐な自分の言葉を乗り越える別の言葉を、受け入れられる姿勢でいたい。
2022/12/03
秋良
もしもダーウィンがガラパゴス諸島を訪れていた時に殺人事件が起きていたら、というダーウィンがポアロでアールがヘイスティングスみたいなミステリー。天才は探偵だってできるのです、もちろん。柳作品は材料も調理も良いのに仕上げがイマイチなこともあるんだけど、これは最後まで面白かった。この時代、この場所ならではの方法と動機で、最後まで犯人が分からなかった。蝶の羽ばたきが遠くの嵐の原因になるかもしれないように、自分の言葉が誰にどんな影響を及ぼすか予想がつかない。常識と呼ばれるものの脆さが顕になる瞬間がたまらない。
2022/12/29
辺辺
面白い。種の起源を唱えるダーウィンがその30年前のガラパゴス諸島を訪れた時に連続殺人事件が起きたなら~というifな歴史ミステリ。若き頃のチャールズダーウィン像を生き生きとして描かれている。自分にとってあたりまえなことは他の人にとってもあたりまえじゃない。行動や言葉の重み、宗教、人種、習慣等などの違い。奥深いな。とはいえ、これを夜中に読むと悪夢に魘されそう、怖くて一人でトイレもいけそうにないので何日分けて読了。いや、ただ普段こういう死人がバンバン出るミステリに免疫がないせいだと思いたい。柳広司、上手いな。
2023/04/10
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