ヴォス 下: オ-ストラリア探険家の物語
ヴォス 下: オ-ストラリア探険家の物語 / 感想・レビュー
ケイ
コンラッドが「闇の奥」で、モームが「南太平洋」などで描いたように、異界の地に君臨しているようで現地には溶け込めず疎外感を感じる英国人の苦悩。ここで探検家ヴォスはドイツ人であるが、作家はオーストラリア人なので、やってきた自分たちと現地に昔から暮らす人々とのアイデンティティーに向き合うことで生み出された小説だろう。なぜ自分たちがここにいて現地の人々の生活に影響を及ぼしているのかと自問し始めたら、そこで文学が生まれた。現地の人々への畏敬と罪悪感、そして自分たちの無力さが記されているように思う。
2016/05/05
NAO
最後の白人の入植地に到達するまではヴォスは探検隊の隊長としての威厳を保っていたが、先に進むにつれてその威厳は崩れていく。白人社会を軽蔑していたヴォスは自らの王国を作ろうとしたが、白人たちと充分な意思疎通ができないのに、アボリジニなら自分の思うように動かせると思ったのだろうか。彼を崇めるように慕うハリーのように、アボリジニたちは自分を崇めてくれるはずだとでも思ったのだろうか。曰くありげなメンバーの性格描写、探検行、ともになかなかリアルでスリリングだ。ヴォスの探検行と並行して描かれるのが、⇒
syaori
面白かったです。下巻では、ヴォスの率いる探検隊の探検と、彼と心を通わせるローラのいるシドニーの社会の様子が交互に語られます。結局ヴォスとはどんな人物だったのか。挫折した男、王になれなかったのに「土人ども」の世界に神のように存在し続ける男、神を信じないのに「キリスト教徒というのはああいうもんだ」と言われる男、「さまざまな色合い」をした人物です。作者は「国の坩堝で責めさいなまれて死ぬ」彼を通じて、「雑然とした」「未来の国」であり「いま」の国であるオーストラリアという存在を描き出したかったのだろうと思いました。
2016/03/12
Э0!P!
ローズは遺児をローラに託し逝去。ヴォスとの子であるかのように愛するが、そのヴォスは、ジャッドに見限られ、彗星という凶事のためにアボリジニの儀式で殞ちる。神であることをやめた彼は、伝説として名を残す。
2022/02/11
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