狙われたキツネ 新装版
狙われたキツネ 新装版 / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
独裁政治による閉塞した生活の中で配給制で足りない食料、秘密警察の監視と密告、春をひさぐ者達と薄曇りのような情景がどこにでも行けるのにどこにも行けないという息苦しさを表現しています。時が経つにつれて形を失っていく狐の毛皮は見せしめだったのかその変化が不気味でした。ルーマニアの独裁政治の中で生きて故郷喪失者でもあった作者のこの作品を通さずにはいられなかった実情に苦しくなりました。
2012/09/21
funuu
股間にタンポンをはさんでいるときには、女たちはスイカの血を腹に抱えているのだ。毎月スイカの日が何日かつづき、スイカの重みを感じる。痛くて仕方ない。猫の腹は毎年きまって大きくなる。やがて生まれる子猫はどれも母猫似のトラ猫だが、その子猫たちがまだ濡れててかてかと光り目も開かないうちに、母猫がみんな食べてしまう。子猫を食べつくしてしまうと、母猫は一週間のあいだ喪に服する。ヘルター ミュラーワールド
2016/04/19
umeko
断片的に書かれる様々な場面が、徐々に物語の形になっていく構成が面白かったです。チャウシェスク独裁政権下の希望を奪われた世界が、映像を見ているかのように鮮明に描かれている様に息苦しさを覚えました。独裁政権が倒れた時のニュースは衝撃的でしたが、その一方でこのような実情だったのだと、ニュースで知る以上のことを感じることができました。そして、ラストの言葉が非常に印象的。
2012/07/09
sk
独裁政権下の抑圧政治が重く描かれる。ここには一つの地獄がある。
2019/07/20
井上裕紀男
ルーマニア政府にかつて監視下へ置かれた市民の日常。興味を持っていたチャウシェスク政権時代だったが、文学的表現が難しく感じる私にとって、難解な書となってしまった。 それでも行間から出てくる異様な空気感は、時に気分を害するものがある。誰もが敵に見える世界は、旧ユーゴスラビアの紛争文献でも垣間見たことを思い出す。千田善氏の著者も見返そうと思う。
2020/11/15
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