ヴェーユ (センチュリーブックス 人と思想 107)
ヴェーユ (センチュリーブックス 人と思想 107) / 感想・レビュー
くまさん
大学時代にキリスト教の洗礼を受けた著者は、ヴェイユの足跡をたどる旅で出会った人から「ヴェイユ教徒」と呼ばれたという。それほどまでにひとりの生と言葉のあり方に深く共鳴し研究を積み重ねる第一人者は偉大すぎるほど偉大だ。不幸をめぐる考察が根本的で、いわく「「不幸」の特性は、不幸な人びと自身には自己嫌悪と罪悪感を、その周囲の人びとの心には「不幸」への憎悪と侮蔑とを生じさせる」。苦しむ心と痛む体にあてがわれる言葉はしかし私たちを不安にさせる。思考の持続と行動の決断を強いるからだ。まだまだできることは多いと感じる。
2018/11/02
柳田
たしか人と思想シリーズではじめて読んだのがこれ。シモーヌ・ヴェイユは、知り合いの先生がエピグラフで使ったりしていて、ちくま学芸文庫の『重力と恩寵』とか『工場日記』、『ヴェーユの哲学講義』などを買って、『工場日記』は一応読んだがあまりピンとこず、『重力と恩寵』は詩集みたいだった。こういう人の書いたものを学問的に論じることができるのかよくわからないが、『工場日記』を書いた契機とか、伝記的なエピソードがかっこいい。生涯頭痛に悩まされた、とか。私もけっこう頭痛もちで、痛むとおっヴェイユだ、とか思ったりしていた…
2018/07/17
さえきかずひこ
現在日本のヴェイユ研究の第一人者である冨原眞弓が1992年に刊行した彼女についての入門書。前半はヴェイユの短い生涯に起きた3度の神との出逢いを基軸に略歴が追われ、後半は主にヴェイユ独特の"不幸"概念と民間伝承についての研究の関わりが述べられる。ボーヴォワールが生前のヴェイユとソルボンヌ大学で一度だけ会い、その著作『娘時代』に彼女への羨みを記しているという記述は印象深い(P.86〜87)。評伝としては短いので、著者による傑作『シモーヌ・ヴェイユ』(2002年、岩波書店)をさらに読むことをお勧めします。
2018/08/23
いのふみ
2つの世界大戦に挟まれた激動の時代を生きた、わずか34年間の生涯。自らの信仰を考え続けた人であり、その眼は社会に向いていた。
2018/11/15
すみ子
自分の理解を確認、まとめるために読んだ。「不幸」や「注意力」などヴェイユ理解にかかせない概念が簡潔に説明されている。『重力と恩寵』や『カイエ』など断片的な著作がヴェイユは多いので、それらを読む前にこの本を読んでおくと理解が早いのだろう…。 あとがきの章で、哲学専攻でもなく仏文学専攻でもなかった冨原先生がヴェイユを読むために一念発起してフランス語を習得したくだりを読むと頭が下がります。関係ないけど…
2016/12/16
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