やまと言葉で哲学する 「おのずから」と「みずから」のあわいで
やまと言葉で哲学する 「おのずから」と「みずから」のあわいで / 感想・レビュー
tamami
古代以来の話し言葉である「やまと言葉」は、日本人が祖先から受け継いだ心のあり様を示している。著者は「自(ずか)ら」と書いて「みずから」とも「おのずから」とも読む二つの言葉を取り上げ、私たちの生活の規範がそれらの言葉の「あわい」に宿っていると記す。その他にも「おもしろい」「はかない」…といったやまと言葉の本義と歴史上の使われ方を、日常での言葉遣いや膨大な文芸作品の中に探り、日本人の心のありかを指し示してくれる。業界用語に溢れた哲学書の氾濫に飽きた人には、心の底から納得できる本書はごく新鮮に映るのではないか。
2021/07/27
はちめ
タイトルに惹かれて買ったのだが、いくらなんでも哲学は言い過ぎで、考えるくらいにしたほうが良い。内容的にも辞書の語源の紹介、種々の文献における活用の紹介が基本パターンで、著者の思索の形跡が記されることは少ない。やまと言葉で哲学するという発想は極めて興味深く、紹介されているやまと言葉には興味深いものもあるが、それらをみずからとおのずからに関連付けようとするのにも無理が感じられる。☆☆☆★
2021/03/25
Lunaria Annua
今日も東京は同じような雨 / 語の意味は 移り気な女性の心の上下往還運動であり 狭い鉢植えに群棲する酢漿の葉である 本を一冊読むと その往還運動の垂直方向の幅が拡がり 肩を寄せ合い細き根を下ろすそれらの葉が増えまたは形を変える ドゥルーズと意味の問題 三・四分咲きの梅の花の如く意味はふと香り立ち 朝の霞の中に佇む桜の花の如く意味は不意に匂い立つ / 世の中はちろりに過ぐる ちろりちろり / せめて時雨よかし ひとり板屋の淋しきに / 蟪蛄春秋を知らず 伊虫あに朱陽の節を知らんや
2020/03/08
mustache
能「養老」(世阿弥)の詞章「それ、行く川の流れは絶えずして、しかも元の水にはあらず、流れに浮かぶ泡沫は、かつ消えかつ結んで、久しく住める色とかや」を筆者は次のように確認する。「人間も同じである、と。いかにつらく悲しいことがあろうとも、この世にあるものは、川が流れるように・・・「みずから」の思いのたけを「おのずから」の働きに響き合わせ・・・いずれついには、濁りや曇が取り除かれ、静かに落ち着き収束しうるものなのだと、つまり「澄み」「済んで」、この宇宙の一隅に十全に「住み」うるものなのだ」と。美しい言葉だ。
2014/10/14
poku
大学の授業でやったので読んだ。最近ボクの中でキェルケゴールを始めとするキリスト教的実存主義と日本思想や親鸞などを始めとする仏教のつながりがとても旬だったのでそういった意味ではこの本はとても役に立った。九鬼周造の本を読みたいなと思った。
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