擬 MODOKI: 「世」あるいは別様の可能性
擬 MODOKI: 「世」あるいは別様の可能性 / 感想・レビュー
読書ニスタ
もどき、擬。たった一文字の解説に、ああ、どれだけの知識を持ち出すのやら。かの千夜千冊の松岡正剛さんの一冊。あらゆるものが、本来生まれた時とは違う目的で活動している。何らかの理由で二足歩行を始めた人類は、大きな脳を維持することができた。その優れた脳を使って、私は読書をする。読書をするために、二足歩行を始めたわけではない。総理大臣も擬なら、男も女も、モドキである。セックスだって、もはや観念上の娯楽でしかない。そうやって、進化した人類は、モドキとしてそれらしい生きる目的を作り出す。生きる意味など無いのだから。
2019/03/24
阿部義彦
編集工学研究所所長、松岡正剛さんの考えるヒントたるエッセイ集、宗教関係の本が多い春秋社からの刊行です。一見思い思いに綴ったようにみえる各綴ですが、思考の階段を登るように考え抜かれて編集されています。(それが仕事なのです。)第五綴「予想嫌い」では『世の中の勝ち負けを予想したり追跡し続けるのはそこそこにした方がいい。日本社会は六割以上が企業社会の関係者で埋まっているが、その会社の多くが「予想漬け」だ。シャープも東芝もその事で苦渋をなめた。』統計と確率など捨てて整合性を求めない面影の編集術。難しいけど刺激的!
2017/11/03
テイネハイランド
図書館の書棚を見ていて見つけた本。松岡さんの著書は、「多読術」以来になります。この本では、古今東西の様々なジャンルの本(難解な内容が多い)が大量に引用され、話があちらこちらに飛ぶので論旨を追うのが難しい印象です。著者自身が読者の目を幻惑させることに喜びを感じているようですので、読者としてはその狙いにあえてのっかり、自身のフィルターに引っかかった参考文献を後日読んでみるのがいいかもしれません。本書では、第16篇孟子伝説などは比較的すんなりと内容が入ってきた印象ですが、他にもいろいろと刺激を受けました。
2018/07/08
Kazehikanai
この「世」は、情緒的だと思う。論理や数字で割りきれない。経済発展と共に、より強調されるようになった合理性や経済。しかし、現実はもっと曖昧で不合理で理不尽で、境界はまだらで、どっちつかず。エントロピーが逆に収縮している世の中の理屈は現代人の錯覚。そう思わせる別様の可能性を提示する「擬」。それを世界や日本の哲学、思想、文学、科学にと、豊かな引用で記述するエッセイは、読者に知的な刺激と新しい視座を与えてくれる。「世」は「擬」、「マレビト」の問いかけに「きのふの空」が見えた気がした。
2020/04/27
koji
松岡さんらしい一冊。ちぐはぐ(鎮具破具)、あべこべ(彼辺此辺)、もどき(擬)、かり(借り、仮り)、ぎり(義理)、ドーリ(道理)、なる、つぐ、いきおふ(丸山真男「つぎつぎになりゆくいきおい」)等松岡ワードによる、折口信夫、孟子、古澤平作、リンマーグリス(細胞共生説)、モース(贈与論)、川喜多半泥子等多彩な登場人物満載の松岡ワールド全開です。ご本人は、肺がんの告知を受けて本書を綴ろうと決めたそうです。その気の病みを滲ませつつ生涯かけて追求してきたことを思い切り語ります。最後に「とことん記録する」は実践します。
2018/01/15
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