十字路 (江戸川乱歩文庫)
十字路 (江戸川乱歩文庫) / 感想・レビュー
めしいらず
戦後に書かれた乱歩らしからぬ緻密でどこかアイリッシュ作品を思わせるようなサスペンス長編の佳作。突発的に妻を殺した男の必死の隠匿工作に偶然紛れ込んでしまうもう一つの死体。見事な隠し場所のトリック。完全犯罪は一見成立したように見えたが、二つの事件の双方からその計画の小さな綻びが見つかり、それは結び付けられ、遂には全貌が露呈する。一点の曇りもない展開に先が読めてしまうきらいはあるけれど、二つの事件を一つに織り上げる手練が甚だ見事だ。犯人の心の揺らぎ。悲恋として閉じるラスト。いつもの不健全さがないのは寂しい点か。
2019/07/15
ころこ
最初に読んだ乱歩作品として思い出深いですが、乱歩作品と認めない議論もあるようで、半信半疑で読み返してみました。プロットが明確で読み易く概ね好評の様ですが、死体の入った車に別の死体が入り込むことと相馬と南が似ているという二つの偶然が弱点になっています。戦後の復興期で世の中の流れが速く確固としたアイデンティティが揺らぐ中、運命の偶然性と交換可能性が「そういうこともあるかも知れない」と思わせる時代に支えられた作品といえるでしょう。
2020/12/14
takaya
プロットは、乱歩が渡辺剣次という人からもらったものとのこと。でも、一気読みさせられる展開でした。タイトルとなっている事件の要「十字路」の設定はありえないものの、その不自然さがかえって書かれた昭和30年という素朴さを感じさせます。読後感はなかなかよく、レトロでありながら新鮮な探偵小説でした!
2023/07/22
FOTD
このタイトルを見たときに、ロバート・ジョンソンを想像してしまったので手にとった。江戸川乱歩の作品を読んだのは久しぶり。だけど、この作品はまるで「火サス」のような雰囲気。説明的な台詞も多いし、最初の殺人まで時間がかかりすぎで、ちょっとテンポが悪く感じた。がしかし「八十オクタン価のを五十リッタ」とか「ラジエーターに水を一杯いれさせて」とかで当時のガソリンスタンドの様子がわかったり、フランス料理店の名前が「鳳来」だったり面白かった。「鳳来」は中華料理店の名前のほうが似合うと思った!
2020/02/16
まさ☆( ^ω^ )♬
面白かったです。いつもの乱歩作品とはテイストが違いましたね。探偵小説という感じではなく、最初から犯人がわかっており、犯罪が明るみに出るまでの過程が、緊迫感のあるストーリーとして描かれていて引き込まれました。
2021/09/22
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