白髪鬼 (江戸川乱歩文庫)
白髪鬼 (江戸川乱歩文庫) / 感想・レビュー
ehirano1
岡本綺堂の「白髪鬼」から乱歩の同名作へ来ました。スピード感がハンパない徹底した復讐の話でした。復讐といえばモンテクリスト伯が真っ先に思い浮かぶのですが、復讐は復讐としてまさに鬼のように敢行する描写が驚異的で印象的でした。
2023/05/14
いたろう
マリー・コレリ作「ヴェンデッタ」の黒岩涙香による翻案小説「白髪鬼」を書き直した小説。コレリ版も涙香版も読んだことはないが、この乱歩版を読んだ後、webで コレリ版、涙香版と乱歩版の違いを読み、やっぱり乱歩らしい作品になっていることを知った。死んだと思われ、埋葬された男が、甦ってきて、親友と妻が自分の死を喜んでいる姿を見てしまうというところは同じだが、乱歩版では、たまたま死んだのではなく、その友人に殺されたことになっており、そこから大仰な装置を使った、おどろおどろしい復讐劇になっているのが、いかにも乱歩流。
2023/03/11
海猫
家庭を奪われ、財産を奪われた男・大牟田の復讐劇。大牟田が絶望的な暗闇で足掻く様や、悲惨な体験のあまり頭髪が白くなり老人のような見た目になってしまう劇的さなど、一人称の派手目な語り口が効果的で大いに気分が乗り入り込む。真相を知る場面のぐぬぬ感が実にたまらない。復讐が始まると語りの勢いもグングン上がってくるし、仕返しの手口が乱歩らしく猟奇的なのも一興。徹底的にやり込めるのでスッキリはするが、最後には枯れたような虚しさが漂うのも良い余韻。作品はコンパクトなれど、復讐する相手の人数が少ないので濃くまとまっている。
2024/11/13
Nat
どこかでモンテクリスト伯を思わせる設定の復讐劇。でも、それよりは大分ストレート。おどろおどろしい雰囲気たっぷりで楽しめたが、主人公の復讐後の独白が抜け殻感たっぷりで、少し呆気なかった。
2021/04/27
ころこ
本作は同名の外国文学の翻案とのことですが、ポーの『早すぎた埋葬』にも拠っています。どこまで原作に忠実か窺い知れない部分はありますが、日本に引き写されると日本ぽくなっているようです。死んだ人間が生き返る恐怖というよりも、青年→老人→胎児と輪廻になっており、不都合な記憶のままに反復される恐怖になっています。「早すぎた埋葬」が海賊の財宝と共に老人になっているというのは、いうまでも無くおとぎ話を想起させます。
2020/12/05
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