手塚治虫傑作選 「戦争と日本人」(祥伝社新書)
手塚治虫傑作選 「戦争と日本人」(祥伝社新書) / 感想・レビュー
zero1
私自身戦争を知らない世代だが、特に平成生まれの人に読んでもらいたい。戦争に関連した手塚作品を新書で紹介。「ザ・クレーター 墜落機」は戦死した兵士を軍神として扱う様が表現されている。泣く母親が哀れ。結末は「バトルランナー」(R・バックマンだが実はS・キング)を思い出した。「悪魔の黒幕」は首相暗殺を狙う男の話。戦争に関係なさそうで深く関連している。原爆や空襲も描かれており、戦争の不条理を学ぶのに役立つ。何冊かシリーズになっている。地味な新書とはいえ、レビュー16件とはもったいない!
2019/05/28
jima
手塚治虫の戦争をテーマにした9作品。白井聡氏の巻末解説より「・・・我々は今、『戦後の終わり』に立ち会っている。それをもたらしたのは3・11福島第一原発の事故であった。我々が畏怖してきたはずの大地を、自然を、我々は自らの手で台無しにした。・・憲法への非常事態条項の書き込みへの策動や・・一連の政策は、政権によるクーデターに等しい。戦後の自由民主主義の基盤は、日々掘り崩されている。」その行き着く先を本書は示している、と。確かに、なるほど。
2017/08/19
江口 浩平@教育委員会
【漫画】逆のものさし講の選定本。手塚治虫の漫画はブラックジャックくらいしか読んだことがなかったが、もっと読んでみたいと思える1冊だった。宮沢賢治の「やまなし」を、戦争による民衆の理不尽な死と読み替えて描き直していたのが印象に残った。小学校6年生とやまなしを読むにあたり、紹介してみてもいいかもしれない。
2019/03/21
roatsu
既読短編ほかの集成。純粋な反戦思想、同時代人として少年期に経験した戦災の惨さと、米ソ冷戦下の核戦争の恐怖など執筆された戦後日本の世相も映した佳作が揃う。表現の巧みさにはいつもながら驚く。ゴッドファーザーの息子は時代を超えて胸を打つ優しくも悲しい物語。ただ、帯の煽りに悪意を感じる。何かにつけあの時代とあげつらうが真に実態を知らず、敗戦のどさくさに占領国以下が植え付け卑屈な負け犬根性で従った暗黒国家のレッテルにいつまで無責任に胡坐をかき続けるのかと。思考停止の自己卑下は日本の将来のためにも打破せねばならない。
2017/07/12
華形 満
この収録9作の中で私的には「やまなし」と「最後はきみだ!」の2作が良かった。宮沢賢治の原作を読んだかどうか曖昧なのだが手塚流のアプローチは流石!「最後は・・」は今ブーム再燃している「君たちはどう生きるか?」と通じるものがあると思える。手塚作品なくして今の日本は語れないのではないか?時代変われど戦争に対する憎悪は永久に変わらず。こうした作品が後世に伝えられて行って欲しい。
2018/07/07
感想・レビューをもっと見る