復讐航路: 北緯17゜の殺人 (ノン・ポシェット な 10-2)
復讐航路: 北緯17゜の殺人 (ノン・ポシェット な 10-2) / 感想・レビュー
ヨコケイ
横浜ーフィリピン間周遊の豪華客船で殺人が起こり、居合わせた推理作家が探偵する。『ナイル』に近いシチュエーションとも言えるのだが、ロマンチックさより、本邦がまだ割と豊かだった頃の風俗描写に物悲しくなる(懐古趣味でなく現況の衰退ぶりに)。或いは中津自身の紀行が元ネタゆえ、クリスティ的な多視点進行と比べ、こぢんまりした印象になったのかもしれない。散りばめられたいかにも〈旅情〉な描写が愉しいが、謎解きには寄与せず、あくまで2サス的なお話のまま。戦時下の暗い因縁が、寄港地と本邦との因縁に照応するのはむべなるかな。
2021/01/01
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