おぅねぇすてぃ (祥伝社文庫 う 3-1)
おぅねぇすてぃ (祥伝社文庫 う 3-1) / 感想・レビュー
ふじさん
明治維新直後の函館と東京を舞台にした、宇江佐真理には珍しい明治物。英語通詞を目指して商社で働く雨竜千吉と米国人貿易商の妻となった幼馴染のお順が主人公。偶然に出会ったが、お順は米国人の妻となり、二人の思いは叶わぬことに、しかし思わぬ転機が訪れる。維新の荒波に翻弄されながらも、最後には結ばれる二人。混乱の時代に生きた人々の様子が丁寧に描かれ、いつもとは違う楽しさを味わうことができた。
2021/08/28
kazu@十五夜読書会
明治時代を舞台にして描く主人公雨竜千吉とお順の恋物語。明治五年。叔父の営む函館の商社で働きながら、英語通詞を夢見る雨竜千吉。彼に心を残しつつ、家の事情で米国人に嫁いだお順。御一新のあと別々の道を歩んでいた幼馴染の男女。築地の外国人居留地で偶然の再会を果たす。今度こそ、互いの気持ちに正直になると誓い合うが、お順の密会に激昂する夫は離縁に条件をつけ、元岡っ引きに監視させる。運命は再びすれ違う事になる。タイトルの「おぅねすてぃ」の章、函館の東築島の梅本楼遊女・小鶴の一途な心が切ない。
2013/06/19
tengen
明治5年、雨竜千吉は叔父の貿易会社に勤め、今は函館の支社で働く。 父の通っていた唐物屋「長崎屋」の主が流暢に外国人と話すのを見て、通詞に憧れている。 函館の地で英語の独学に苦慮する千吉のもう一つの悩みはお順への想いであった。 長崎屋の娘お順は米国人の妻となっていた。 千吉はお順への想いの捌け口に遊女小鶴とわりない仲となる。 想いがよそにあると知る小鶴から千吉はおぅねぇすていが足りないと指摘される。 honestyとは正直・真心。 不運な火事で亡くなった小鶴の言葉を胸に千吉は自分に正直に生きようと誓う。
2021/10/04
楽駿@新潮部
読書会仲間本。久しぶりの宇江佐氏だが、これは珍しく明治時代のお話。明治版、「君の名は」の感じ。今の様に、スマホもなければ、電話だって、それほどなかった時代だからこそ、すれ違い、待つことの難しさと尊さを感じる。このタイトルの「おぅねぇすてぃ」を一番感じさせてくれた小鶴が、早々に亡くなる事で、この意味を訴えてくれたのだが、それだけに一番不憫かもしれない。相手を信じて待つことは、今の時代は、もっと難しいのかも。明治以上に、今の時代の流れの方が早いと思うので。けれど、最後は、信じる者が勝つ!
2021/08/11
みっちゃんondrums
表題作の『おぅねぇすてぃ』が切なかった。主人公の千吉が遊女・小鶴に、「正直、真心(まごころ)」という意味だと教えた英語のhonesty。千吉には他に思い人・お順がいて、小鶴はうすうす勘づいている。「小鶴だけが大事な女だ」と言いながら、千吉の胸がひえびえとするのは、千吉が「おぅねぇすてぃ」ではないから。ある種の男心なのかもしれないと読める。千吉とお順の恋物語が主になっていくが、小鶴をもっと登場させて欲しかった。千吉よりも、友人で元殿様の是清の性質が好ましい。明治初期の雰囲気が味わえる。
2016/05/22
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