出世花 (祥伝社文庫) (祥伝社文庫 た 28-1)
出世花 (祥伝社文庫) (祥伝社文庫 た 28-1) / 感想・レビュー
佐々陽太朗(K.Tsubota)
四つの短編すべてが切ない話だが、わけても「落合螢」がやるせなく心に残る。お縁の中に岩吉を密かに慕う気持ちが芽生え始めていたのではないか。岩吉には慕う相手として、お紋よりお縁こそが相応しかったのにと悔やまれる。しかしそれが恋というものだろう。「恋に落ちる」とはよく言ったものだ。お縁が岩吉を想う気持ちは「愛しみ」、岩吉がお紋を想う気持ちは「恋」と言うことか。
2013/06/14
修一朗
続編出ました!ってことで,積み本になっていたデビュー作を。読み始めこそ「納棺夫日記」が思い浮かんだけど,そこは高田さん独自の世界,死者をお浄めする行為を精緻に描きつつも,実は故人の秘めたる人生と縁の成長に思いを籠める,みをつくし料理帖や銀二貫同様,じわぁと沁みる物語でした。4編ともよかった。「偽り時雨」は滅法面白いミステリーそのものだし,この形で“時代検死ミステリーモノ”として続けることも可能だったと思う…でもそうしないんだよね。そこはやっぱりあくまでも,“人の情の”高田郁さんなのでした。蓮花の契りへ…
2015/07/04
紫 綺
続編完結編に備え、再読。小説デビュー作とは思えない完成度。江戸の世の人情味に涙する。新作に期待が膨らむ。
2015/07/01
ちはや@灯れ松明の火
かつて魂の器だったものがこの世での役目を終え土へと還る。死という穢れに塗れた其れを洗い浄めて旅立ちを見送るその掌が、輝くように美しく見えた。母に棄てられ父を喪った少女が、死者を弔う墓寺で授けられた新たな名。縁。日々彼女は死と向き合い、その裏側に確かにあった生命に思いを馳せる。人と人との繋がりが織り成す縁の錦は、決して幸せな色ばかりではない。苦労を重ねてきた夫婦、一途な想いに焦がれる男、姉妹のように支え合う遊女たち、お家事情に引き裂かれた母子、けれども哀しい涙さえも、彼女を凛と花咲かせるための水となる。
2010/09/22
しゅわ
「とにかく一度読んでみて」と姉に薦められて手にしました。江戸時代の普通の人々の物語…まさに私のツボな本でした。江戸版「おくりびと」みたいなかんじなのでテーマ的には重いのですが、暗くなりすぎない微妙なさじ加減がうまいです。しみじみ読めました。 こちらの作家さんのデビュー作とのこと。同じ作家さんの「みをつくし料理帖シリーズ」も薦められたので、そちらも読んでみようかな?
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