猫の椀 (祥伝社文庫)
猫の椀 (祥伝社文庫) / 感想・レビュー
藤枝梅安
野口さんが「軍鶏侍」以前に書いていた短編をまとめた1冊。「軍鶏侍」とは趣の異なる作品群。いろいろな作家の文を思い起こさせる。ファンタジー色が強く、宮部みゆきさんを連想させる「猫の椀」「糸遊(かげろう)」。落語に造詣の深い野口さんならではの「閻魔堂の見える所で」。商人の心意気と若気の至りを描いた「えくぼ」。泉鏡花風の「幻祭夢譚」。全体として軽いタッチで描かれているが、人間の「業」とでも言うべき欲や妬みが、誰の心にもあること。そして誰もが罪を背負っている点で共通であると筆者は我々に静かに語りかけてくる。
2012/12/09
タツ フカガワ
市井を舞台にした短編5話を収録。印象的だったのは、見習い僧英心の旅の一夜での不思議な体験を描いた「幻祭夢譚」。また職人譚「糸遊」には、“北町奉行所朽木組”シリーズ発表前の同心勘三郎と伸六が登場。組紐職人夫婦の危難を救います。
2019/05/06
あかんべ
猫の椀と聞いて落語の話を思い浮かべたが、趣の違う話でおもしろかった。
2016/02/08
ひかつば@呑ん読会堪能中
デビュー前の短編集、ということで、最初はダールのような奇妙な話。次も同じトーンになるのかと思ったら謎解きがあり、さらのは落語2つに御伽草子のようなものまで、毛色の違う話が5つと盛り沢山だが、これだけバラつくとアンソロジーのようだ。
2013/05/27
がぁ
短篇を成功させるのがいかに難しいかがよくわかる作品集。「えくぼ」の主人公が至る最後の境地に深く頷いた。野口さんにはたくさん書いていただきたい。光るものを感じる。
2012/05/31
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