矢上教授の午後 (祥伝社文庫)
矢上教授の午後 (祥伝社文庫) / 感想・レビュー
真理そら
東京郊外のとある大学の取り壊されるという噂のあるオンボロ研究棟。その研究棟に牢名主のように住み着いているミステリー大好きな「矢上教授」を探偵役とした物語。雷雨の激しい中で停電したりあれこれあって思いがけなく密室状態になった研究棟で見知らぬ男の他殺死体が出てきた。棟内にいるはずの人物は消えた。カバーに登場している女子大生・御牧の出番が少ないのがややさびしいかも。つまり桂さんの山にはニホンオオカミが生き延びているんですよね。
2022/08/18
アルピニア
異なる視点を短い章でつなげていく構成。最初は少し混乱したが、しだいに自分で状況を構築していく楽しさを感じるようになった。メインの事件の他にいくつかの小事件が絡んでいてそれがちょっと目くらましのようになっている。民俗学的な事柄や観点が絡められているところに森谷さんらしさを感じた。1章と50章に登場した彼女にドキリ。
2018/10/09
とも
★★★★上質で上品な一冊。物語は、矢上教授と呼ばれる70才も越えた非常勤講師が巣食う大学の片隅にある旧棟で起こる殺人事件だが、そこでは嵐による停電や非常階段が閉じられることにより密室と化す。その中で、他の教授や助手、学生たちのおもわくがあり隠された事実が存在しながらも、ゆったりと状況を確認し原因を追求していくのだが、その雰囲気は矢上教授の醸し出すノーブルさもあり、ゆったりとしてく。事件の真相は、最後の数章で思いのほか大きく展開され花を添えるが、兎に角 休日の午後に紅茶でも飲みながらが似合う作品であった。
2016/12/05
へくとぱすかる
長篇だとは思わなかった! 「日常の謎」系の短編集だとばかり。大学構内の研究棟で、集中豪雨が作り出す孤立の中、何とか解決に向かってがんばる登場人物たち、そして中心となる矢上「教授」(本当は非常勤講師)の活躍。ミステリマニアの矢上がここぞとばかり、場を取り仕切っていく姿は、ミステリマニアにとって一種理想かもしれない。カバー絵のイメージとは少し違って、笑わせるようなギャグを交えない、シリアスな本格ミステリ。矢上の登場する第2作が読みたいと思える。
2013/12/28
nins
次から次へ変わっていく全50章。中盤までのもどかしさもあってか、1冊をしっかり読んで実感する読了感。ミステリ好きの大学非常勤講師の矢上と女子学生の御牧咲。二人の視点が交互に展開される章展開。キャンパス一角にある「オンボロ棟」。嵐の日に「オンボロ棟」で起こった殺人事件。停電も起こり、外部との接触が難しい閉鎖空間に残された人々。普通と離れた空間での事件。てっきり矢上教授と御牧さんの二人で事件の真相を追うのかと思っていたら、御牧さんは電車で大学に向かう側の登場人物という変化球も。最後までたどり着く達成感はある。
2012/10/30
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