飛翔 軍鶏侍 (祥伝社文庫)
飛翔 軍鶏侍 (祥伝社文庫) / 感想・レビュー
ベルるるる
読み終わってしばらく何も考えられなかった。短編「巣立ち」、普通なら仇を討ったらそこでメデタシメデタシのはずだけど、若者は一日で大人となって寺へと入っていく。人間の心の奥底の測り知れない何かを感じる短編だった。ただし、これはシリーズ1作目の短編「夏の終わり」を読んでいないといけない話。また短編「咬ませ」で権助が軍鶏を飼い殺しにしてはいけないと話す場面は、生ある物(者)の誇りや生きがい、そして持っている本質を語っていたと思う。素晴らしいシリーズ3作目。
2018/09/16
藤枝梅安
シリーズ3作目は短編2本と中編1本。源太夫の道場に弟子が集まることを妬んで闇討ちを仕掛けた大谷と原の2人の道場主が逐電し、源太夫の道場に通うようになったが、次第にやめていった。その中で残った深井半蔵を立ち直えいを描いた「名札」。若い軍鶏を鍛えるために老いた軍鶏と戦わせる中で葛藤する源太夫を権助が諫める「咬ませ」。そして、圭二郎の成長を描く「巣立ち」。若鶏が成長し、逞しくなって飛翔する姿を感慨を持って見送る源太夫の姿が、静かな、しかし深い感動を与えてくれる。続編が楽しみ。
2013/02/18
onasu
園瀬の里を訪れるのも3作目。今回は少しゆっくり、と思っていたのに読みたい心が…。 巻末の解説にある通り、道場を開いてより早5年、人付き合いを厭い隠居したはずの源太夫も、弟子思い、家族思いとなり、弟子たちの成長も著しい。そして、最も顕著なのが、作品の熟成ぶり。 そんな中、初作、大鯉との格闘で一時に成長した大村圭二郎に、またして変容の時が訪れる。道場での名札を、16歳にして三枚目にまで上げ、若軍鶏とも称され、先行きが期待されていた矢先…。 次作では、軍鶏仲間のご隠居や小兵の使い手に再会したいです。
2013/01/28
タツ フカガワ
シリーズ3作目は中・短編3話を収録。冒頭「名札」からして読み応えがありました。さらに、かつての問題児大村圭二郎を巡る中編「巣立ち」が素晴らしい(藤沢周平ファンとしては『蝉しぐれ』をちらっと想起)。そういえばこのシリーズ、弟子にしても軍鶏にしても“育成”がテーマのようで、彼らを見つめる視線の優しさが静かな感動的を呼びます。
2019/04/01
ひっと
成功した或は名を成した人物を育てた師匠を弟子の視線から描いた小説は しばしば目にするが、師匠の立場にある人物を主人公に据えその心の動きを赤裸々に描いた小説は稀だと思う。主人公は剣の師としてお節介と思えるほどに弟子達の世話をやく。弟子の一人はその想いに応える成長を示し,やがて師の予想(と読者の予想)を超える成長を遂げる。また別の弟子は歪んでしまった心を更生し成長を遂げる。読者を飽きさせる事のない譚と構成と文章で綴られるこの本は実に良い本であると覚えた。とても面白かった。
2014/08/10
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