潮鳴り (祥伝社文庫)
潮鳴り (祥伝社文庫) / 感想・レビュー
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
かつては俊英と謳われたものの、些細な失態でお役御免となった伊吹櫂蔵。落ちぶれて今では「襤褸蔵」とまで揶揄されるまでなった男。そんな櫂蔵が藩に裏切られ切腹となった義弟の無念を晴らすべく立ち上がる。落ちた花は二度とは咲かぬもの、再び花を咲かすことができるのか。「蜩の記」に続く羽根藩シリーズ。このシリーズを通して言えるテーマは「武士の矜持」であろう。命を絶つよりも耐えて忍んで生きながらえることの方がはるかにつらいものである。★★★★
2017/12/31
KAZOO
葉室さんの「蜩の記」に続く豊後羽根藩シリーズ(全5作)の2作目です。藤沢周平さんの海坂藩シリーズを意識してのものなのでしょう。訳あって家を出て一人で酒を飲みながら生活している主人公が、家を継いだ弟が切腹します。家に戻され城に出資した主人公がその原因を探っていく話です。主人公に絡む人物たちなどがよく描かれています。最後はすっきり終わります。
2024/09/21
とし
・・・「ひとはおのれの思いにのみ生きるのではなく、ひとの思いをもいきるのだ」 「落ちた花はおのれをいとおしんでくれたひとの胸の中にさくのだと・・・」・・・最後は感動的でしたね。
2017/12/31
ツン
蜩ノ記から読んで感動して、乾山晩秋というデビュー作を含む短編集を読んだ時は、淡々とした抑制の効いた文章で驚きました。その短編集でも、後半に向かって、少しポップな感じ?になって行くのですが、作風にそういう濃淡があるような気がします。そういう意味では、本作はかなりポップよりな、時代小説ではあっても2010年代に書かれただけあるなという感じ。えっ、そんなことになってしまうの?と悲しくて泣けましたし、いい話だったけど、最後にまさかそんな水戸黄門の印籠みたいなまとめになるとは思いませんでした。
2022/06/07
じいじ
読み始めて間もなく「これは面白そうだぞ」と手応えを感じた。物語の舞台は、著者の直木賞受賞作『蜩ノ記』と同じ九州・豊後の羽根藩。主人公・伊吹櫂蔵は、かつては抜きんでた技に長けた剣豪だったが、失脚して藩を追われた。その櫂蔵が義弟の背負った汚名を払拭するために、再び国許へ…。気骨ある物語の中で、櫂蔵とお芳との恋は、読み手の気持を癒してくれる一服の清涼剤です。二人の不器用な愛欲場面に、純粋な愛を見ました。朝井まかての解説は、なかなか味わい深いです。
2022/09/30
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