愚者の毒 (祥伝社文庫)
愚者の毒 (祥伝社文庫) / 感想・レビュー
さんつきくん
物語の組み立て方が秀逸でとても面白かった。過去と高級老人ホームに入所する現代を行き来する。第一章は1985年、葉子と希美が出会い、旧家の家政婦として働くことになった葉子。葉子は借金と失語症の甥っ子を抱えていた。第二章は舞台を1965年の九州の筑豊に移し、炭鉱住宅での極貧ぶりを描く。廃退的で救いようがない描写はがっつり読んだことはないけれどプロレタリア文学の臭いがした。第三章では第二章を踏まえて第一章の出来事の真実に迫る描写が秀逸でした。毒をもって毒を征す。日本推理作家協会賞受賞作
2017/10/12
こうじ
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎4/5 面白かったよ(*^_^*)すごーく重い小説!辛く、切なく、悲しい感じがあり、中盤から引き込まれてしまった。昔も色々と大変だったんだなぁと感じ、また、今も今で大変だなぁっと^_^本当に衝撃的な作品だったよ^_^
2016/12/10
しんたろー
宇佐美さん3冊目。生年月日が同じ希美と葉子、二人の視点が交互に描かれ、哀しい過去と不穏な現在が解き明かされてゆく形式なので、全く飽きることなく読み進められる。 東野圭吾さんの『白夜行』と松本清張さん『砂の器』をミックスしたかのような物語だが、その2作には登場しない素敵な善人や恐ろしいサイコパスを加味しているので、著者らしい人物造形と人間愛さえも感じる。何よりも、過酷な運命に抗うように必死に生きる人たちが切なく愛おしい。「凄い!」と唸るドンデン返しはないが、骨太の人間ドラマ&ミステリとして素直に称賛したい!
2018/05/07
Kazuko Ohta
読むのに体力が要ると聞いていましたが、重量級。職安の初歩的ミスで知り合った2人の女性。これまで人づきあいを避けてきた彼女たちが無二の親友に。不穏な空気を漂わせながらも第1章はまだ平和。第2章以降は本当にキツイ。登場人物の名前のせいなのか、なぜか読んでいるあいだじゅう、山崎ハコの『織江の唄』が頭の中を流れていました。内容はまるで違うのに、どん底感が一緒。誰が誰なのかは予想がついたからその点に驚きはないけれど、綿々と続く過去の描写が辛すぎて、なのに読まずにいられません。生きることは苦しい。それでも生きてゆく。
2018/02/06
akiᵕ̈
“貧困よりも飢餓よりも恐ろしいものがここにある。それは絶望だ。” この背景を心底味わったが為に“生きる"事への執着が凄まじい圧巻の物語でした。理不尽からの絶望ゆえ、温もりが欲しい、繋がっていたい、ここから抜け出したいという気持ちは痛々しい程伝わってくるけど、この生への執着があまりにも多くの人を犠牲にしてしまった。現在と過去の回想が織り交ぜられ、至る所に張り巡られていた伏線の回収が自然で、どんな結末が待っているんだろうと、作者と一体になって読み進められた気持ち。とても切なくやるせないですが傑作です!
2019/11/09
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